指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
指揮刀と銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」。
銃砲刀剣類等所持取締令1条2項
判旨
銃砲刀剣類等所持取締令にいう「刀剣類」とは、各類型の形態を備えるだけでなく、鋼質性の材料で製作された刃物であるか、又はある程度の加工により刃物となり得る実質を備えることを要する。
問題の所在(論点)
銃砲刀剣類等所持取締令1条(現行法2条2項参照)にいう「刀剣類」に該当するか否かの判断において、形態や殺傷の危険性以外に、材質や加工可能性といった「実質」を検討する必要があるか。
規範
「刀剣類」とは、社会通念上「刀」「剣」「やり」「なぎなた」「あいくち」「飛出しナイフ」のそれぞれの類型にあてはまる形態及び実質を備える刃物を指す。したがって、たとえ「刀」の形態をそなえ、刃渡り15センチメートル以上で、切先が鋭利かつ殺傷の危険性がある物件であっても、鋼質性の材料をもって製作された刃物であるか、あるいは、ある程度の加工により刃物となり得るものであるという「実質」を欠く場合は、これに該当しない。
重要事実
被告人は、居宅において、旧陸軍が使用していた刃渡り75センチメートルの指揮刀一振を所持していた。当該指揮刀は、現在刃はつけられていないものの、切先が鋭利であり、容易に人を殺傷しうる危険性があった。第一審及び原審は、その形態と危険性のみを根拠に本件物件が「刀剣類」に該当すると判断し、被告人を有罪とした。
事件番号: 昭和41(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。
あてはめ
本件指揮刀は、形態において「刀」に該当し、切先の鋭利さから殺傷能力も認められる。しかし、本件の事実審理では、当該物件が「いかなる材料をもって製作されたか」という材質の点や、「どの程度の加工により刃物となり得るか」という刃物化の可能性(実質)が明らかにされていない。単に形態と殺傷の危険性のみから漫然と「刀剣類」にあたると判断することは、法令の解釈適用を誤ったものである。
結論
本件指揮刀が「刀」としての実質を備えているか否かを審理させるため、原判決を破棄し、本件を原審へ差し戻す。
実務上の射程
現行の銃刀法2条2項の「刀剣類」の定義(人身に危害を加えるのに使用されるおそれがあるという抽象的危険性だけでなく、客観的な形態・実質の具備を要する)の解釈に直接妥当する。答案上は、所持の対象物が準刀剣類や模造刀剣類と区別されるべき場面で、材質や加工の容易性という「実質」の要件を明示する際に活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)430 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 破棄自判
銃砲刀剣類等所持取締令第七条の規定による登録を受けた日本刀を所持する所為は、所持者その人の性格ないし所持の目的の如何にかかわらず、同令第二条の規定に違反せず、不法所持罪を構成しない。
事件番号: 昭和29(あ)940 / 裁判年月日: 昭和31年4月10日 / 結論: 破棄自判
一 昭和三〇年七月法律第五一号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいう「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」とは、社会通念上右のそれぞれの類型にあてはまる形態、実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきである。 二 栗の収穫期に一時的に使用する本件の番小屋や刑法一三〇条にいう「人の看守する建造物」にあたるもの…
事件番号: 昭和30(あ)423 / 裁判年月日: 昭和32年11月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締令に基づき登録を受けた日本刀を所持する行為は、所持の目的を問わず、同令2条の所持罪の対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は、登録を受けた日本刀1本を、昭和29年5月20日に田川市内の炭坑寮から同市内の別の場所まで携行し所持した。原審および第一審は、登録された刀剣であっ…
事件番号: 平成5(あ)728 / 裁判年月日: 平成8年2月13日 / 結論: 棄却
刃渡りが約三三センチメートルで、片面に鋭利な刃が尽けられた鋼鉄製の刀身が柄に目釘で固定され、和包丁の特徴である俗にアゴと称される段差が?(はばき)により完全に覆い隠されているなど判示の形態、実質を備える本件刃物は、包丁儀式に使用するものとして所持されていたとしても、銃砲刀剣類所持等取締法(平成三年法律第五二号による改正…