銃砲刀剣類等所持取締令第七条の規定による登録を受けた日本刀を所持する所為は、所持者その人の性格ないし所持の目的の如何にかかわらず、同令第二条の規定に違反せず、不法所持罪を構成しない。
登録を受けた日本刀の所持と不法所持罪の成否
銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令7条,銃砲刀剣類等所持取締令26条
判旨
銃砲刀剣類等所持取締令に基づき登録を受けた日本刀を所持する行為は、所持の目的や所持者の性格にかかわらず、同令上の所持罪を構成しない。たとえ人を殺傷する目的であっても、別途殺傷に関する罪を構成し得るかは格別、同令による所持自体を違法とすることはできない。
問題の所在(論点)
銃砲刀剣類等所持取締令7条により登録を受けた日本刀を、人を殺傷する目的で所持した場合に、同令2条の所持罪が成立するか(登録による適用除外が所持目的によって制限されるか)。
規範
銃砲刀剣類等所持取締令(以下「取締令」)2条本文および同条但書4号の規定によれば、同令7条の規定により登録を受けた日本刀を所持することは、所持罪の対象から除外されている。取締令全体の規定を鑑みても、登録を受けた刀剣の所持について、所持の目的や所持者の性格によって所持自体を禁止・制限し、犯罪として処罰する旨の規定は存在しない。
重要事実
被告人は、昭和30年6月17日未明、東京都内の他人の宅地において日本刀を携帯所持した。当該日本刀は、取締令7条の規定に基づき適法に登録されたものであった。原審は、被告人が人を殺傷する目的で当該日本刀を所持していた等の事情に基づき、登録を受けた日本刀であっても所持の目的いかんによっては取締令2条違反(所持罪)が成立すると判断し、被告人を有罪とした。
事件番号: 昭和30(あ)423 / 裁判年月日: 昭和32年11月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締令に基づき登録を受けた日本刀を所持する行為は、所持の目的を問わず、同令2条の所持罪の対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は、登録を受けた日本刀1本を、昭和29年5月20日に田川市内の炭坑寮から同市内の別の場所まで携行し所持した。原審および第一審は、登録された刀剣であっ…
あてはめ
本件日本刀は、取締令7条に基づき適法に登録されたものである。同令2条但書4号は、登録を受けた刀剣の所持を一律に禁止の対象から除外しており、目的による制限を付していない。また、同令において所在の明確化(8条・9条等)や行政処分(16条等)の規定はあるものの、所持者の目的や性格を理由に所持自体を禁止する規定はない。したがって、被告人が人を殺傷する目的で所持していたとしても、登録がある以上、同令上の所持罪を構成することはない。
結論
被告人の行為は罪とならない。したがって、被告人を有罪とした原判決および第一審判決を破棄し、被告人は無罪とされるべきである。
実務上の射程
行政上の登録・許可を受けた行為が刑事罰の対象外となる「形式的適法性」の範囲を示す。法令が特定の要件(登録等)を具備した行為を処罰対象から除外している場合、主観的な目的が悪質であっても、類推解釈や拡張解釈によって処罰範囲を広げることは罪刑法定主義の観点から許されないことを示唆する。
事件番号: 昭和32(あ)2599 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 破棄差戻
指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
事件番号: 昭和41(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。
事件番号: 昭和30(あ)430 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締令(昭和25年政令第334号)およびポツダム宣言受諾に伴う命令の効力に関する法理に基づき、同令の憲法適合性および講和条約発効後の有効性を認めた。 第1 事案の概要:被告人は銃砲刀剣類等所持取締令に違反する行為(所持)を行い、起訴された。弁護人は、①同令が憲法に違反すること、②ポ…
事件番号: 昭和29(あ)2970 / 裁判年月日: 昭和33年2月12日 / 結論: 棄却
銃砲刀剣類等所持取締令第二条は憲法第二九条に違反しない。