銃砲刀剣類等所持取締令第二条は憲法第二九条に違反しない。
銃砲刀剣類等所持取締令第二条と憲法第二九条
銃砲刀剣類等所持取締令2条,憲法29条
判旨
銃砲刀剣類等所持取締令による所持の原則禁止は、犯罪の未然防止および国民の生命財産の安全確保という社会公共の福祉保持を目的とするものであり、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
銃砲刀剣類等所持取締令(現:銃刀法)が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止し、その財産権的側面を制限していることは、憲法29条2項にいう「公共の福祉」に適合するものとして許容されるか。
規範
財産権の内容を制限する規定が憲法29条に適合するか否かは、その制限が社会公共の福祉保持のために必要な範囲内にあるかという観点から判断される。目的が正当であり、その目的達成のために制限が必要かつ合理的な範囲内であれば、当該規定は合憲である。
重要事実
被告人が銃砲刀剣類を所持していたところ、銃砲刀剣類等所持取締令(当時)2条に基づき、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止する規制に抵触した。これに対し被告人側は、当該所持禁止の規定は憲法29条が保障する財産権を侵害するものであり違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和34(あ)2063 / 裁判年月日: 昭和37年4月6日 / 結論: 棄却
火薬類取締法五九条二号、二一条の各規定は、憲法二九条に違反しない。
あてはめ
まず、銃砲刀剣類は、殺人や傷害等の犯罪に供されやすい性質を持つ極めて危険な物件である。本規定の目的は、かかる犯罪を未然に防止し、国民の生命財産の安全を期することにある。このような公共の安全確保は「社会公共の福祉保持」そのものであり、その目的のために所持を原則禁止することは、必要かつ合理的な制限といえる。したがって、個人の財産権の行使を制限しても、公共の福祉による正当な制約の範囲内にあると解される。
結論
銃砲刀剣類の所持を原則禁止する規定は、社会公共の福祉保持のために必要な規定であり、憲法29条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
財産権の消極的制約(警察目的の制限)に関するリーディングケースの一つ。公共の安全という強い公益目的がある場合、財産権の制限が広く認められる傾向を示す。答案上は、目的の正当性と手段の必要性を「公共の福祉」の具体化として論じる際の基礎として用いる。
事件番号: 昭和57(あ)1721 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団構成員であることをもって直ちに量刑上不利益な差別的処遇をすることは許されないが、当該属性を考慮したとしても直ちに憲法14条に反する不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団の構成員であるという事実が量刑において考慮された。これに対し、弁護人は「被告人が暴力団構成員で…
事件番号: 昭和30(あ)430 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締令(昭和25年政令第334号)およびポツダム宣言受諾に伴う命令の効力に関する法理に基づき、同令の憲法適合性および講和条約発効後の有効性を認めた。 第1 事案の概要:被告人は銃砲刀剣類等所持取締令に違反する行為(所持)を行い、起訴された。弁護人は、①同令が憲法に違反すること、②ポ…
事件番号: 昭和32(あ)430 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 破棄自判
銃砲刀剣類等所持取締令第七条の規定による登録を受けた日本刀を所持する所為は、所持者その人の性格ないし所持の目的の如何にかかわらず、同令第二条の規定に違反せず、不法所持罪を構成しない。
事件番号: 昭和29(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
有罪判決において、適用法令として銃砲刀剣類等所持取締令を示すには、同令と共に昭和二七年法律第一三号をも示す必要はない。