有罪判決において、適用法令として銃砲刀剣類等所持取締令を示すには、同令と共に昭和二七年法律第一三号をも示す必要はない。
銃砲刀剣類等所持取締令を適用する場合と昭和二七年法律第一三号明示の要否
刑訴法335条1項,銃砲刀剣類等所持取締令2条,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する警察関係命令の措置に関する法律(昭和27年法律13号)
判旨
法律が改正された場合であっても、判決時における有効な罰則を適用すべきであり、判決において立法の経過を詳述する必要はない。また、新法の施行日以降の継続的な不法所持行為を罰することは、憲法39条の遡及処罰禁止に抵触しない。
問題の所在(論点)
継続的な不法所持行為に対し、所持の途中で施行された新法を適用することが憲法39条に違反しないか。また、判決において立法の経過を詳細に記載する必要があるか。
規範
不法所持罪のような継続犯において、行為の途中で新法が施行された場合、新法の施行日以降の行為を対象として処罰することは適法である。また、判決書において適用法条を示す際、現行の法規を摘示すれば足り、旧法からの変遷などの立法経過を詳細に記述する義務はない。
重要事実
被告人が拳銃および実包を不法に所持していたとして起訴された事案。原審は、拳銃の所持については「銃砲刀剣類等所持取締令」を、実包の所持については「火薬類取締法」を適用して有罪とした。被告人側は、実包の所持が火薬類取締法の施行(昭和25年11月3日)前からの継続的なものである点につき、同法の適用は憲法39条の遡及処罰禁止に違反する旨、および判決における適用法条の摘示に不備がある旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)1809 / 裁判年月日: 昭和27年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一罪が複数の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その一部の罪が恩赦(大赦)の対象であっても、他の罪が対象外であれば、大赦令2条に基づき全体として赦免の効力は及ばない。 第1 事案の概要:被告人Aは、占領軍に属する拳銃および実砲を所持していた。この行為は、昭和24年政令第3…
あてはめ
実包の不法所持について、原判決は火薬類取締法の施行期日である昭和25年11月3日以降の行為を罰したものであることが明らかである。施行後の継続的な所持状態を処罰の対象としている以上、施行前の行為を遡及して罰するものではなく、憲法39条違反の主張は前提を欠く。また、原判決は現行の「銃砲刀剣類等所持取締令」を正しく摘示しており、立法の経過を詳細に掲げる必要はないため、法令適用の摘示に誤りはない。
結論
本件における新法の適用および法令の摘示は適法であり、憲法39条違反にも当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
継続犯の処断において、法改正を跨ぐ場合の適用法条の選択基準を示す。答案上は、施行後の状態を捉えて処罰する限り、憲法39条の遡及処罰禁止の問題は生じないことを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)156 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】ポツダム宣言に基づき制定された、いわゆるポツダム勅令及びそれに基づく政令は、日本国憲法外の法的効力を有するものであり、占領終了後においても憲法29条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が、昭和24年政令389号等の規定に違反したとして起訴された事案。被告人側は、占領終了後において当該…
事件番号: 昭和27(あ)6708 / 裁判年月日: 昭和29年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令改廃により罰則が廃止された場合であっても、経過規定により「なお従前の例による」とされるときは、憲法31条や39条に抵触せず、当該行為時の罰則を適用して処罰することができる。 第1 事案の概要:被告人は「連合国占領軍財産等収受所持禁止令」に違反する行為を行った。しかし、原判決の時点におい…
事件番号: 昭和30(あ)2219 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為…
事件番号: 昭和27(あ)5221 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領政策の遂行と国内経済秩序の維持を目的とする政令による財産権の制限は、憲法29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(貴金属の処分の制限等に関する政令)1条に違反する行為を行った。占領終了後も同政令の違反行為を処罰する昭和27年法律137号3条の経過規定に基づき起訴…