判旨
連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。
問題の所在(論点)
平和条約の発効に伴い、占領下の政令が当然に失効するか。また、その効力を法律により維持させることが、憲法31条等の禁止する事後立法に該当するか。
規範
特定の政令が占領政策の遂行のみならず、国内経済秩序の維持という「公共の福祉」を目的として制定されたものである場合、平和条約の発効によって当然に失効するものではなく、法律によってその効力を維持させることは憲法に違反しない。
重要事実
被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為を行った。弁護人は、同政令は平和条約の発効とともに当然に失効したものであり、昭和27年法律81号および137号によりその効力を維持し罰則を適用することは、憲法31条(適正手続)や事後立法禁止の原則に違反し、刑の廃止があった場合に該当すると主張した。
あてはめ
本件政令は、連合国占領軍の占領政策遂行という目的に加え、わが国の国内経済秩序の維持という公共の福祉を目的として制定されたものである。かかる内容は憲法29条(財産権)にも違反せず、平和条約発効と同時に失効したとは解されない。したがって、昭和27年法律81号等による効力の維持は、一度失効した罰則を遡及的に復活させるものではなく、事後立法には当たらないといえる。
結論
本件政令は失効しておらず、これに基づく処罰は合憲である。したがって、刑の廃止があったとは認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(あ)3996 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)第一条は、憲法第二九条に違反しない。 二 右昭和二四政令第三八九号は、憲法第三一条に違反しない。 三 所論は、昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)を廃止すると共に、「この法律の施行前にした所為に対する罰則の適用については、なお従前の…
ポツダム宣言受諾に伴う占領下の法体系から平時法体系への移行期における「限時法」的性格の判断基準を示している。公共の福祉に基づく国内的な立法目的が認められる限り、条約発効後も法的継続性が維持されるという構成をとる。司法試験上は、法の効力停止や事後立法の禁止に関する基礎的な理解を問う際の一事例として位置づけられる。
事件番号: 昭和27(あ)5221 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領政策の遂行と国内経済秩序の維持を目的とする政令による財産権の制限は、憲法29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(貴金属の処分の制限等に関する政令)1条に違反する行為を行った。占領終了後も同政令の違反行為を処罰する昭和27年法律137号3条の経過規定に基づき起訴…
事件番号: 昭和27(あ)6842 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和20年勅令第542号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)に基づき発せられた命令(ポツダム命令)は、サンフランシスコ平和条約の発効によって直ちにその効力を失うものではない。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた命令に違反したとして起訴された。弁護人は、サンフ…
事件番号: 昭和27(あ)6708 / 裁判年月日: 昭和29年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令改廃により罰則が廃止された場合であっても、経過規定により「なお従前の例による」とされるときは、憲法31条や39条に抵触せず、当該行為時の罰則を適用して処罰することができる。 第1 事案の概要:被告人は「連合国占領軍財産等収受所持禁止令」に違反する行為を行った。しかし、原判決の時点におい…
事件番号: 昭和28(あ)4769 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和20年勅令第542号及びそれに基づく政令は、平和条約の発効により当然に失効するものではなく、廃止後の罰則存続規定により、廃止前の違反行為を処罰することは憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号に違反する行為を行った。その後、昭和27年に平和条約が発効して占領が終…