判旨
占領政策の遂行と国内経済秩序の維持を目的とする政令による財産権の制限は、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
昭和24年政令389号1条による財産権の制限、および占領終了後も同政令違反を罰する法律の経過規定が、憲法29条に違反するか。
規範
特定の目的(占領政策の遂行や国内経済秩序の維持等)を達成するために課される財産権の制限は、その目的が正当であり、かつ制限が合理的な範囲内にある限り、憲法29条に違反しない。
重要事実
被告人は、昭和24年政令389号(貴金属の処分の制限等に関する政令)1条に違反する行為を行った。占領終了後も同政令の違反行為を処罰する昭和27年法律137号3条の経過規定に基づき起訴されたが、被告人側は、当該政令が憲法29条の保障する財産権を侵害するものであり、占領終了後の処罰は違憲であると主張した。
あてはめ
本件政令は、一面では連合国占領軍の占領政策遂行の目的を達成するために制定されたものであるが、他面ではわが国の国内経済秩序の維持という公共の福祉に資する目的を有している。このような目的達成のために必要な範囲でなされる財産権の制限は、憲法29条が許容する合理的な制約といえる。したがって、当該政令に基づく禁止措置およびその効力を維持する経過規定は合憲である。
結論
本件政令および経過規定は憲法29条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
公共の福祉による財産権の制約に関する初期の判例である。占領下の特殊な事情に基づく判断ではあるが、財産権が絶対無比なものではなく、経済秩序維持等の公益的観点から合憲的な制限を受け得るという一般論を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和28(あ)3996 / 裁判年月日: 昭和35年3月16日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)第一条は、憲法第二九条に違反しない。 二 右昭和二四政令第三八九号は、憲法第三一条に違反しない。 三 所論は、昭和二四年政令第三八九号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)を廃止すると共に、「この法律の施行前にした所為に対する罰則の適用については、なお従前の…
事件番号: 昭和29(あ)156 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】ポツダム宣言に基づき制定された、いわゆるポツダム勅令及びそれに基づく政令は、日本国憲法外の法的効力を有するものであり、占領終了後においても憲法29条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が、昭和24年政令389号等の規定に違反したとして起訴された事案。被告人側は、占領終了後において当該…
事件番号: 昭和30(あ)2219 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為…
事件番号: 昭和27(あ)1186 / 裁判年月日: 昭和28年7月18日 / 結論: 棄却
所論は、昭和二四年政令第三八九号1条の規定は、いわゆるポツダム勅令による委任の範囲即ち昭和二〇年勅令五四二号にいう「聯合国最高司令官ノ為ス要求ニ係ル事項」を逸脱した無効の法令であり、これを適用した原判決は憲法三一条に違反すると主張し、右政令第三八九号一条にいう「収受」「所持」なる意義につき独自の解決をして、原判決の説示…
事件番号: 昭和27(あ)6708 / 裁判年月日: 昭和29年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法令改廃により罰則が廃止された場合であっても、経過規定により「なお従前の例による」とされるときは、憲法31条や39条に抵触せず、当該行為時の罰則を適用して処罰することができる。 第1 事案の概要:被告人は「連合国占領軍財産等収受所持禁止令」に違反する行為を行った。しかし、原判決の時点におい…