判旨
一罪が複数の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、その一部の罪が恩赦(大赦)の対象であっても、他の罪が対象外であれば、大赦令2条に基づき全体として赦免の効力は及ばない。
問題の所在(論点)
一個の行為が複数の罪名に触れる場合(観念的競合)において、その一部の罪のみが大赦の対象に含まれるとき、当該行為全体について赦免の効力が生じるか。
規範
一個の行為が二個以上の罪名に触れる、いわゆる観念的競合の関係にある場合(刑法54条1項前段)、その一部の罪が大赦の対象であっても、他の一部が対象外であるときは、大赦令2条の規定により全体として赦免せられないものと解する。
重要事実
被告人Aは、占領軍に属する拳銃および実砲を所持していた。この行為は、昭和24年政令第389号(占領目的阻害行為処罰令)に違反するだけでなく、同時に銃砲刀剣類等所持取締令および火薬類取締法にも抵触するものであった。被告人は、前者の政令違反が大赦令の対象であるとして赦免を主張した。
あてはめ
被告人の行為は、大赦令の対象となり得る政令389号違反の所為であるが、同時に大赦の対象外である銃砲刀剣類等所持取締令および火薬類取締法違反にも触れるものである。このように一罪が数法の関係(観念的競合)にある場合には、大赦令2条の「大赦にかからない罪と他の罪とがあるとき」に該当し、全体として赦免の対象から除外されると評価される。
結論
被告人の所為は大赦の対象とはならず、赦免せられない。
実務上の射程
観念的競合における恩赦の効力の不可分性を示す。実務上、刑法54条1項前段の適用を受ける事案において、特定の罪名に着目して恩赦の抗弁を主張する際の限界を画する判例である。
事件番号: 昭和27(あ)458 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和24年政令第389号(貴金属の管理に関する政令)違反と贓物罪(現行法の盗品等関与罪)が同時に成立する場合、それらは一所為数法の関係(観念的競合)にあり、大赦の適用判断においても一体として扱われる。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号(貴金属の管理に関する政令)に違反する行為を…
事件番号: 昭和27(あ)5250 / 裁判年月日: 昭和28年4月3日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令違反の罪について、判決確定前に大赦令が公布された場合、刑事訴訟法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきである。また、窃盗罪については大赦の対象外であるため、刑法235条を適用して処断する。 第1 事案の概要:被告人は、窃盗罪および連合国占領軍財産等収受所持禁止令(昭…
事件番号: 昭和29(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
有罪判決において、適用法令として銃砲刀剣類等所持取締令を示すには、同令と共に昭和二七年法律第一三号をも示す必要はない。
事件番号: 昭和27(あ)2551 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴の言渡しをしなければならない。本判決は、複数の罪が起訴された事案において、大赦の対象となった罪について免訴を認めつつ、他の罪については有罪を維持した。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号違反(ポツダム宣…
事件番号: 昭和26(あ)3181 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は刑訴法337条3号に基づき免訴を言い渡すべきであり、確定した他の罪があるときは別途刑を定めるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の財産であるラジオ真空管を所持したとして昭和24年政令第389号違反の罪に問われるとともに、窃盗罪でも起…