装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。
儀礼刀が銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項第二条第二項にいう刀剣類にあたるとされた事例
銃砲刀剣類等所持取締法2条2項,銃砲刀剣類等所持取締法3条1項
判旨
銃砲刀剣類所持等取締法における「刀剣類」の意義について、儀礼刀であっても同法2条2項の要件を満たす限り、所持が禁止される「刀剣類」に該当すると判断した。
問題の所在(論点)
儀式や礼装に用いるための「儀礼刀」が、銃砲刀剣類所持等取締法2条2項(および3条1項)にいう「刀剣類」に該当するか。
規範
銃砲刀剣類所持等取締法2条2項(現行3条1項等)にいう「刀剣類」とは、刃渡り、形態、材質、製法等の客観的性質に照らし、人命に危険を及ぼすおそれのある武器としての実質を備えているものをいう。儀礼用等の特定の目的で製作されたものであっても、右の客観的要件を満たす限り「刀剣類」に含まれる。
重要事実
被告人は、儀礼に用いるための刀(儀礼刀)を所持していた。弁護人は、当該儀礼刀は本来の武器としての刀剣類とは異なるものであり、同法が規制対象とする「刀剣類」には当たらないと主張して上告した。
事件番号: 昭和32(あ)2599 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 破棄差戻
指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
あてはめ
本件儀礼刀は、その形状、構造、材質等において人命に危害を加えることが可能な武器としての実質を備えていたものと認められる。したがって、製作の目的が儀礼用であるという主観的・用途的事情があったとしても、客観的に刀剣類としての性質を有する以上、同法の規制対象となる。
結論
本件儀礼刀は銃砲刀剣類所持等取締法にいう刀剣類に該当する。したがって、同法違反の罪が成立するとした原審の判断は正当である。
実務上の射程
刀剣類の定義において「用途」よりも「客観的な形状・危険性」を重視する判断枠組みを示している。答案上では、美術品や儀礼品であっても、殺傷能力のある客観的形態を備えていれば、構成要件該当性を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 平成5(あ)728 / 裁判年月日: 平成8年2月13日 / 結論: 棄却
刃渡りが約三三センチメートルで、片面に鋭利な刃が尽けられた鋼鉄製の刀身が柄に目釘で固定され、和包丁の特徴である俗にアゴと称される段差が?(はばき)により完全に覆い隠されているなど判示の形態、実質を備える本件刃物は、包丁儀式に使用するものとして所持されていたとしても、銃砲刀剣類所持等取締法(平成三年法律第五二号による改正…
事件番号: 昭和30(あ)423 / 裁判年月日: 昭和32年11月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類等所持取締令に基づき登録を受けた日本刀を所持する行為は、所持の目的を問わず、同令2条の所持罪の対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は、登録を受けた日本刀1本を、昭和29年5月20日に田川市内の炭坑寮から同市内の別の場所まで携行し所持した。原審および第一審は、登録された刀剣であっ…
事件番号: 昭和32(あ)430 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 破棄自判
銃砲刀剣類等所持取締令第七条の規定による登録を受けた日本刀を所持する所為は、所持者その人の性格ないし所持の目的の如何にかかわらず、同令第二条の規定に違反せず、不法所持罪を構成しない。
事件番号: 昭和48(あ)1121 / 裁判年月日: 昭和49年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法における「けん銃」に該当するためには、犯行当時において、当該けん銃が正常な実包発射の機能を有していることを要する。 第1 事案の概要:被告人が所持していた各けん銃について、銃刀法違反の罪が問われた。弁護人は、当該けん銃が殺傷能力を欠くものであるとして、法令の解釈誤りや憲法違反…