刃渡りが約三三センチメートルで、片面に鋭利な刃が尽けられた鋼鉄製の刀身が柄に目釘で固定され、和包丁の特徴である俗にアゴと称される段差が?(はばき)により完全に覆い隠されているなど判示の形態、実質を備える本件刃物は、包丁儀式に使用するものとして所持されていたとしても、銃砲刀剣類所持等取締法(平成三年法律第五二号による改正前のもの)三条一項にいう刀剣類に当たる。
包丁儀式に使用するものとして所持されていた刃物が銃砲刀剣類所持等取締法(平成三年法律第五二号による改正前のもの)三条一項にいう刀剣類に当たるとされた事例
銃砲刀剣類所持等取締法(平成3年法律52号による改正前のもの)2条2項,銃砲刀剣類所持等取締法(平成3年法律52号による改正前のもの)3条1項
判旨
銃砲刀剣類所持等取締法における「刀剣類」とは、武器として使用される目的で作られたものに限られず、社会通念上「刀」というにふさわしい形態及び実質を備えているものをいう。
問題の所在(論点)
包丁儀式用として製作された刃物が、銃砲刀剣類所持等取締法3条1項(平成3年法律第52号による改正前)に規定される「刀剣類」に該当するか。特に、本来の用途が調理器具的な性格を持つ場合に、その客観的形態から「刀」として評価できるかが問題となる。
規範
銃砲刀剣類所持等取締法3条1項にいう「刀剣類」に該当するか否かは、その刃物の形状、寸法、材質、構造等の諸要素を総合し、社会通念上「刀」というにふさわしい形態・実質を備えているかという観点から判断すべきである。なお、当該刃物の本来の用途が包丁儀式用等であっても、右の客観的性質を備える以上、同法上の刀剣類に該当し得る。
重要事実
被告人は、包丁儀式に使用する目的で、鋼鉄(炭素鋼)製の刃物7本を所持していた。各刃物は、刃渡り約32.2cm〜33.4cm、刃幅約3.5cm、棟の厚み約0.4cmであり、片面が研磨された鋭利な刃と鋭利な先端を有していた。鍔はないが、刀身とほぼ同幅の白木の柄に目釘で固定され、白木の鞘に収められていた。和包丁の特徴であるアゴ(段差)は存在するものの、ハバキによって完全に覆い隠されていた。
事件番号: 昭和41(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。
あてはめ
本件各刃物は、炭素鋼製で刃渡りが30cmを超え、鋭利な刃と先端を備えており、殺傷能力を有する実質を備えている。また、目釘で柄に固定され、鞘に収められている構造は、武器としての刀の形態と共通する。和包丁特有の段差(アゴ)がハバキで隠されている点は、外観上、より「刀」に近い印象を与えるものである。これらの諸事情に照らせば、長さの点でも俗に言う「脇差」に相当し、社会通念上「刀」というにふさわしい形態・実質を備えているといえる。
結論
本件各刃物は、いずれも銃砲刀剣類所持等取締法にいう「刀剣類」に該当する。
実務上の射程
本判決は、刀剣類の定義において「主観的な目的」よりも「客観的な形態・実質」を重視する立場を明確にした。包丁等の実用的な名称が冠されていても、その物理的構造が日本刀等に類似し、殺傷の危険性が高い場合には同法の規制対象となるため、実務上、境界線上の刃物の認定において重要な指針となる。
事件番号: 昭和32(あ)2599 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 破棄差戻
指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
事件番号: 昭和48(あ)1121 / 裁判年月日: 昭和49年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲刀剣類所持等取締法における「けん銃」に該当するためには、犯行当時において、当該けん銃が正常な実包発射の機能を有していることを要する。 第1 事案の概要:被告人が所持していた各けん銃について、銃刀法違反の罪が問われた。弁護人は、当該けん銃が殺傷能力を欠くものであるとして、法令の解釈誤りや憲法違反…
事件番号: 平成15(あ)163 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 棄却
反目状態にあった男とのけんか抗争等に備える目的で自車のダッシュボード内に入れておいた刃物を車外に持ち出した後に路上で携帯する行為は,同人運転の自動車に意図的に衝突されて自車が転覆し,車外にはい出す際に護身用にズボンのポケットに上記刃物を移し替えたという事情があることを考慮しても,その違法性が阻却される余地はない。
事件番号: 昭和29(あ)940 / 裁判年月日: 昭和31年4月10日 / 結論: 破棄自判
一 昭和三〇年七月法律第五一号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいう「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」とは、社会通念上右のそれぞれの類型にあてはまる形態、実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきである。 二 栗の収穫期に一時的に使用する本件の番小屋や刑法一三〇条にいう「人の看守する建造物」にあたるもの…