一 昭和三〇年七月法律第五一号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいう「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」とは、社会通念上右のそれぞれの類型にあてはまる形態、実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきである。 二 栗の収穫期に一時的に使用する本件の番小屋や刑法一三〇条にいう「人の看守する建造物」にあたるものとした原判決の判断は正当であつて、なんら違法はない。
一 昭和三〇年七月法律第五一号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいう「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」の意義 二 刑法第一三〇条にいう「人の看守する建造物」にあたる一事例
銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前および後)1条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前および後)2条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前および後)15条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前および後)26条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前および後)27条,刑法130条
判旨
銃砲刀剣類等所持取締令(当時)にいう「刀剣類」とは、社会通念上、刀、ひ首、剣、やり、なぎなたの各類型にあてはまる形態・実質をそなえる刃物を指す。したがって、刃渡りが15センチメートル以上であっても、これらの類型のいずれにもあてはまらないナイフ等は同令の「刀剣類」には当たらない。
問題の所在(論点)
改正前銃砲刀剣類等所持取締令1条・2条にいう「刀剣類」の意義と、船員用・登山用ナイフがこれに該当するか。
規範
法(改正前銃砲刀剣類等所持取締令1条)にいう「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」とは、社会通念上、それぞれの類型にあてはまる形態・実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきである。たとえ刃渡りが15センチメートル以上あっても、右の観念にあてはまらない刃物は、同令にいう「刀剣類」にはあたらない。
重要事実
事件番号: 昭和32(あ)2599 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 破棄差戻
指揮刀であつても、「刀」としての実質(鋼質性材料をもつて製作された刃物又は或る程度の加工により刃物となりうるものであること)をそなえないものは、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「刀剣類」にあたらない。
被告人らは、刃渡り約15.1センチメートルの片刃の刃物(甲第4号証)を所持していた。当該刃物は、先が少し反っており、木製の柄と革製のサックが付属し、つばはなかった。この種の刃物は、従来から通常、船員用ナイフまたは登山用ナイフとして使用されているものであった。原審は、これを同令所定の刀剣類にあたるとして有罪とした。
あてはめ
本件刃物は、刃渡りこそ15センチメートルを超えているものの、その形態・実質(片刃、反り、つばの欠如、用途)に照らせば、社会通念上「刀」「ひ首」「剣」「やり」「なぎなた」のいずれの類型にもあてはまるものとみることは困難である。また、当時の同令15条(携帯禁止規定)が対象とする「類似する刃物」は、刃渡り15センチメートル未満のものに限定されていた。したがって、本件刃物は当時の法令による取締の対象外であったといえる。
結論
本件刃物の所持は銃砲刀剣類等所持取締令違反にはならず、同点については無罪。原判決を破棄し、建造物侵入罪および火薬類取締法違反についてのみ処断する。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、例示された列挙事由(刀、剣等)の解釈において安易な類推解釈を排し、社会通念に基づく類型性を重視した判断枠組みとして活用できる。現在の銃刀法2条1項の定義規定の解釈においても、その形態的・実質的特徴から類型該当性を判断する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和41(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
装飾用に製作された現に刃がついていない儀礼刀でも、その刀身が、刃をつけるに足りる一三クロームステンレス鋼で作られており、平やすり、電動式グラインダー等による加工研摩によつて、容易に鋭利な刃をつけることができるもの(原判文参照)は、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第二条第二項にいう刀剣類にあたる。
事件番号: 昭和31(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
刃渡約一四糎の登山用ナイフは、あいくちとその作りおよびその性能または用途において類似し、社会通念上人の身体を損傷する用に供される危険性があるから、銃砲刀剣類等所持取締令第一五条にいわゆるあいくちに類似する刃物にあたる。
事件番号: 昭和29(あ)2250 / 裁判年月日: 昭和31年7月4日 / 結論: 棄却
厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。
事件番号: 平成5(あ)728 / 裁判年月日: 平成8年2月13日 / 結論: 棄却
刃渡りが約三三センチメートルで、片面に鋭利な刃が尽けられた鋼鉄製の刀身が柄に目釘で固定され、和包丁の特徴である俗にアゴと称される段差が?(はばき)により完全に覆い隠されているなど判示の形態、実質を備える本件刃物は、包丁儀式に使用するものとして所持されていたとしても、銃砲刀剣類所持等取締法(平成三年法律第五二号による改正…