厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。
刀剣類の不法所持と殺人未遂は牽連犯か
銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,刑法199条,刑法203条,刑法45条,刑法54条
判旨
刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には、通常、手段と結果の関係があるとはいえないため、牽連犯ではなく併合罪として処断すべきである。
問題の所在(論点)
殺人の実行行為に供された刀剣類の不法所持罪と、殺人未遂罪との間に刑法54条1項後段の「牽連犯」が成立するか、あるいは併合罪(45条)となるか。
規範
刑法54条1項後段にいう「犯罪の手段……である行為」とは、ある罪の性質上、その手段として通常行われる関係にあるものをいう。したがって、一方の行為が他方の行為の手段として用いられたとしても、それが類型的な手段関係にない場合には、牽連犯とはならず併合罪(同法45条)となる。
重要事実
被告人は、所持していた短刀を用いて殺人未遂事件を起こした。原審は、短刀の不法所持罪(銃砲刀剣類等所持取締令違反等)と、それを用いた殺人未遂罪について、両罪の間に通常手段結果の関係にあるとはいえないとして併合罪として処断した。これに対し、弁護側が牽連犯(科刑上一罪)を主張して上告したものである。
事件番号: 昭和27(あ)4271 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】傷害致死罪と銃砲刀剣類等所持取締令違反(七首の不法携帯)は、観念的競合等の関係にはなく、併合罪の関係にある。 第1 事案の概要:被告人は七首(短刀)を不法に携帯し、それを用いて他人を負傷させ、死亡させた。この事実につき、傷害致死罪と、当時の銃砲刀剣類等所持取締令に基づく不法携帯の罪の罪数が問題とな…
あてはめ
本件における短刀の不法所持と殺人未遂との関係について検討する。殺人罪(または殺人未遂罪)の遂行において、刀剣類の不法所持が常に、あるいは一般的にその手段として必要とされるわけではない。すなわち、殺人の手段として刀剣類を用いることはあり得るとしても、刀剣類の所持自体が殺人の「通常」の手段であるという類型的な関係は認められない。したがって、両罪は通常手段結果の関係にあるとはいえず、刑法54条1項後段の適用はないと判断される。
結論
本件短刀の不法所持と殺人未遂とは牽連犯ではなく、併合罪として処断するのが正当である。
実務上の射程
牽連犯の判断基準が「主観的な目的・手段の関係」ではなく「客観的・類型的な手段・結果の関係」にあることを示した重要判例である。答案上では、予備行為や所持罪が目的犯の手段となっている場合、それが社会通念上、当該犯罪の通常・典型的な手段といえるかを検討する際のメルクマールとなる。
事件番号: 昭和24(れ)1719 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 棄却
原判決は、被告人の判示第一の犯行につき、その犯意の證明として「若し日本刀や匕首で相手を斬り付けるときは、斬り所によつては當然相手を死に到らしめることを豫想しながら」本件犯行に出たことを記載している。自己の行爲が他人を死亡させるかも知れないと意識しながら敢えてその行爲に出た場合が殺人罪のいわゆる未必の故意ある場合に當るこ…
事件番号: 昭和57(あ)1914 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
自己が約二週間前まで同棲していた女性のマンション内において、その台所から持ち出した包丁を同女と関係を持つた男性の前頸部に突きつけるなどして同人に慰藉料の支払方を承認する文書を作成させたり、同女の頭部を右包丁の峰で殴打したりし、その間ある程度の時間継続してこれを手に把持していた本件行為は、たとえその場所が自己と長年同棲し…
事件番号: 昭和31(あ)1067 / 裁判年月日: 昭和33年5月19日 / 結論: 棄却
高等裁判所が旧刑訴法事件につき覆審としてなした判決は、刑訴第四〇五条第三号にいう判例にあたらない
事件番号: 昭和46(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和47年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として判例違反を主張する場合には、違反するとされる判例を具体的に摘示する必要があり、その欠如は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、事実誤認および量刑不当を理由に上告を申し立てた。その際、弁護人の一人が判例違反を主張したが、どの判例に違反するかという具体的な摘示を欠いた…