判旨
傷害致死罪と銃砲刀剣類等所持取締令違反(七首の不法携帯)は、観念的競合等の関係にはなく、併合罪の関係にある。
問題の所在(論点)
殺傷行為(本件では傷害致死)と、その手段として用いられた凶器の不法携帯(銃砲刀剣類等所持取締令違反)との間の罪数関係が、一罪か併合罪か。
規範
特定の犯罪行為(例えば傷害致死)と、その際に使用・所持していた凶器の不法携帯(銃砲刀剣類等所持取締令違反等)は、社会通念上、別個の行為として評価されるべきものであり、刑法45条前段の併合罪として取り扱う。
重要事実
被告人は七首(短刀)を不法に携帯し、それを用いて他人を負傷させ、死亡させた。この事実につき、傷害致死罪と、当時の銃砲刀剣類等所持取締令に基づく不法携帯の罪の罪数が問題となった。
あてはめ
傷害致死罪は人の身体・生命を侵害する犯罪であるのに対し、七首の不法携帯は公衆の安全を害する犯罪であり、保護法益および行為の性質が異なる。本件において、七首を携帯する行為と、その七首を用いて傷害を負わせる行為は、時間的・空間的重なりがあるとしても、法的には別個の行為と認められる。したがって、両者は一罪(観念的競合等)を構成するものではない。
結論
傷害致死罪と七首不法携帯の罪は併合罪(刑法45条前段)となる。
実務上の射程
殺人罪や傷害罪と、銃刀法違反(所持・携帯)の罪数関係を検討する際の基礎となる判例である。犯行の直前・直後の所持のみならず、犯行そのものに使用された場合であっても、所持(携帯)と殺傷行為は別個の評価を受けることを示しており、実務上も併合罪として処理されるのが通例である。
事件番号: 昭和29(あ)2250 / 裁判年月日: 昭和31年7月4日 / 結論: 棄却
厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。
事件番号: 昭和25(れ)1544 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
記録に徴するに被告人は本件殺人行為を為すに使用した銃剣を不法に所持していたものであるそして銃剣の不法所持罪はその所持を開始した特に成立するのであるから、本件殺人行為の行われる以前において本件不法所持罪は成立したわけであつて、たまたま被告人が本件殺人行為を為すに用いた銃剣が不法所持にかかるものであるとしても、殺人行為と不…
事件番号: 昭和25(れ)1003 / 裁判年月日: 昭和25年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】傷害罪(刑法204条)の成立には、必ずしも傷害の意思(生理的機能障害を生じさせる認識・認容)があることを要せず、暴行の意思をもって暴行を加え傷害の結果を生じさせた場合も含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、被害者に対して暴行を加えたところ、被害者が傷害を負い、その結果として死亡するに至った(傷害…
事件番号: 昭和25(れ)400 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
原判決は、被告人が正犯たるAにおいて判示被害者両名に傷害を加えるに至るかも知れないと認識しながら判示匕首を貸与したところ、右Aが殺人の意思を以つて該匕首により被害者両名を刺殺した場合には、被告人は傷害致死幇助として刑法第二〇五条、同第六二条第一項をもつてこれを処断すべきである。
事件番号: 昭和38(あ)546 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
日本刀不法所持罪はその不法所持自体によつて成立し、日本刀を誇示して脅迫する暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪とは犯罪構成要件を異にし、被害法益も異つているから、第一審判決が同判示第二において認定する日本刀の不法所持が、同判示第一のこれを誇示してなした脅迫のためのものであつて、誇示した間は、誇示即ち所持の関係にあつても、…