神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に地元の市長が出席して祝辞を述べた行為は,地元にとって,上記神社が重要な観光資源としての側面を有し,上記大祭が観光上重要な行事であったこと,上記団体はこのような性質を有する行事としての大祭に係る諸事業の奉賛を目的とするもので,その事業自体が観光振興的な意義を相応に有していたこと,上記発会式は,市内の一般の施設で行われ,その式次第は一般的な団体設立の式典等におけるものと変わらず,宗教的儀式を伴うものではなかったこと,上記市長は上記発会式に来賓として招かれて出席したもので,その祝辞の内容が一般の儀礼的な祝辞の範囲を超えて宗教的な意味合いを有するものであったともうかがわれないことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に地元の市長が出席して祝辞を述べた行為が,憲法20条3項に違反しないとされた事例
憲法20条
判旨
市長が宗教法人の祭祀奉賛会の発会式に出席し祝辞を述べた行為は、当該行事の観光振興的意義や社会的儀礼という態様に照らし、憲法上の政教分離原則に違反しない。当該行為は、宗教との関わり合いの程度が我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超えないものと解される。
問題の所在(論点)
市長が宗教法人の祭祀を奉賛する団体の発会式に出席して祝辞を述べる行為が、憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」に該当するか。
規範
憲法20条3項の「宗教的活動」とは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいう。国家と宗教との関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超える場合に、これを禁止する。判断に当たっては、当該行為の場所、外形、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的、宗教的色彩の有無、社会通念等を総合的に考慮して判断すべきである(目的効果基準)。
重要事実
白山市内に所在する白山神社の鎮座2100年大祭を奉賛する目的で「奉賛会」が設立された。当時の市長は、一般施設で開催された奉賛会の発会式に来賓として公用車で出席し、祝辞を述べた。この式典は宗教的儀式を伴わず、祝辞も儀礼的な範囲内であった。一方、白山神社は重要な観光資源であり、本件大祭も観光上重要な行事であった。住民が、市長の出席に伴う運転職員の手当支出は政教分離原則に違反する違法な支出であるとして、損害賠償を求めた。
あてはめ
まず、本件神社は重要な観光資源であり、奉賛会の事業自体が観光振興的な意義を相応に有していた。次に、発会式は一般施設で行われ、式次第も一般的な団体設立の式典と変わらず宗教的儀式を欠いていた。さらに、市長の祝辞の内容も一般的な儀礼の範囲内であり、宗教的色彩を帯びない。これらの事情を総合すれば、市長の行為は地元の観光振興に尽力すべき立場から社会的儀礼を尽くす目的で行われたものであり、特定の宗教への援助・助長等の効果を伴わない。したがって、宗教との関わり合いは相当とされる限度を超えない。
結論
本件行為は憲法上の政教分離原則に違反せず、当該支出を阻止しなかった市長に指揮監督上の義務違反はないため、請求は棄却される。
実務上の射程
津地鎮祭訴訟以来の目的効果基準を、自治体首長の「式典出席・祝辞」という社会的儀礼の場面に適用した事例である。宗教法人が関与する行事であっても、世俗的な観光振興目的が認められ、態様が一般の儀礼に留まる場合は、許容される射程が広いことを示している。答案作成上は、外形的儀礼性と世俗的目的(観光・地域振興)を対比させて論述する際の規範となる。
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