知事が大嘗祭に参列した行為は,大嘗祭が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式であること,他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまること,参列が公職にある者の社会的儀礼として天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
知事が大嘗祭に参列した行為が憲法20条3項に違反しないとされた事例
憲法20条
判旨
公職にある者が天皇の即位に伴う伝統儀式である大嘗祭に参列する行為は、その目的が社会的儀礼を尽くす点にあり、特定の宗教を援助・助長する効果を持たないため、憲法の禁ずる宗教的活動(20条3項)に該当しない。
問題の所在(論点)
公職にある知事が、神道形式で行われる皇室の儀式(大嘗祭)に参列し拝礼する行為が、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」に該当し、政教分離原則に違反するか。
規範
憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは、国等と宗教との関わり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものをいう。その判断は、当該行為の場所、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的、一般人への効果・影響等を諸般の事情を考慮し、①目的が宗教的意義を持ち、②効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるかという基準(目的効果基準)により客観的に判断する。
重要事実
鹿児島県知事(被上告人)が、天皇の即位に伴う皇室の伝統儀式である大嘗祭の一部(悠紀殿供饌の儀)に参列し、神道形式の儀式において拝礼した。大嘗祭は、天皇が安寧と五穀豊穣を祈念する神道の儀式としての性質を有していたが、地方公共団体の代表等も広く案内されていた。
事件番号: 平成11(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成14年7月9日 / 結論: その他
知事,副知事及び県農政部長が県内で行われた主基Dの儀に参列した行為は,主基Dの儀が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式である大嘗祭の一部を構成する一連の儀式の一つであること,他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまること,参列が公職にある者の社会的儀礼として天皇の即位に祝意,敬意を表する目的で行われたことなど判…
あてはめ
大嘗祭は7世紀以降行われてきた皇室の重要な伝統儀式である。本件参列は、地方公共団体の長という公職にある者の社会的儀礼として、国民統合の象徴である天皇の即位に祝意を表する「目的」で行われた。また、多数の公職者が参列する中での一時的な拝礼にとどまり、特定の宗教を「援助、助長、促進」するような「効果」があるとは認められない。したがって、宗教との関わり合いは社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超えない。
結論
知事の大嘗祭への参列は、憲法20条3項の宗教的活動に該当せず、政教分離原則及び同規定に違反しない。
実務上の射程
津地鎮祭訴訟以来の目的効果基準を、皇室の伝統儀式への参列という場面でも維持・適用した。伝統儀式への参列については、公職者の「社会的儀礼」としての性格が重視され、宗教的関わりが相当な限度内と判断されやすい傾向を示す。
事件番号: 平成14(行ツ)279 / 裁判年月日: 平成16年6月28日 / 結論: 棄却
1 県知事及び県議会議長が即位礼正殿の儀に参列した行為は,即位礼正殿の儀が皇室典範24条の規定する即位の礼の一部を構成する伝統的な皇位継承儀式であること,参列が公職にある者の社会的儀礼として他の参列者と共に天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。 2 県議会議…
事件番号: 平成20(行ツ)202 / 裁判年月日: 平成22年7月22日 / 結論: 破棄自判
神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に地元の市長が出席して祝辞を述べた行為は,地元にとって,上記神社が重要な観光資源としての側面を有し,上記大祭が観光上重要な行事であったこと,上記団体はこのような性質を有する行事としての大祭に係る諸事業の奉賛を目的とするもので,その事業自体が観光…
事件番号: 令和2(行ヒ)238 / 裁判年月日: 令和3年5月14日 / 結論: 破棄自判
県知事が管弦楽団による演奏会に出席したことは,県がその事業の一環として当該演奏会を共催したものであるなど判示の事情の下では,公務に該当する。