社団たる医療法人の定款に,出資した社員が退社時に受ける払戻し及び当該法人の解散時の残余財産分配はいずれも当該法人の一部の財産についてのみすることができる旨の定めがある場合において,当該定款には上記定めの変更を禁止する旨の条項があるものの,法令において定款の再度変更を禁止する定めがなく,上記一部の財産の範囲に係る当該定款の定めは上記条項による変更禁止の対象とされていないなど判示の事情の下では,当該法人の増資時における出資の引受けに係る贈与税の課税に関し,当該引受けが相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)9条にいう「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に該当するか否かの判定において,当該法人の財産全体を基礎として当該出資を評価することには合理性がある。 (補足意見がある。)
社団たる医療法人の定款に,出資した社員が退社時に受ける払戻し及び当該法人の解散時の残余財産分配はいずれも当該法人の一部の財産についてのみすることができる旨の定めがある場合において,当該法人の増資時における出資の引受けに係る贈与税の課税に関し,当該法人の財産全体を基礎として当該出資を評価することに合理性があるとされた事例
相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)9条,相続税法22条,医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)44条2項,医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)54条,医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)56条1項
判旨
医療生活協同組合の脱退に伴う持分払戻請求権の譲渡が行われた場合において、当該持分の価額を「出資額」ではなく、純資産価額を基礎とする「時価」により評価して譲渡所得を算定した課税処分は、当該法人の資産状態や払戻規定の性質に照らし、適法である。
問題の所在(論点)
消費生活協同組合法に基づき、定款で払戻額が出資額に制限されている持分の譲渡において、所得税法上の「譲渡所得」の計算基礎となる価額は、出資額(払戻予定額)か、それとも純資産価額を反映した時価か。
規範
所得税法上の譲渡所得の算定において、取引相場のない持分の価額は、客観的交換価値(時価)により評価すべきである。法人の定款等により払戻額が出資額に限定されている場合であっても、①当該法人の資産が持分に実質的に帰属し得ること、②将来的に定款変更や解散等によって剰余金の分配や残余財産の分配を受ける期待権が含まれていること等の事情がある場合には、その持分には出資額を超える潜在的な資産価値が認められる。したがって、当該持分の譲渡対価が正当な時価に基づいているかは、単なる払戻予定額ではなく、法人の純資産価額や収益性を反映した価額を基準に判断すべきである。
事件番号: 昭和54(行ツ)136 / 裁判年月日: 昭和56年6月26日 / 結論: その他
負担附贈与がされた場合における贈与税の課税価格は、右贈与にかかる財産の時価から当該負担額を控除した価額である。
重要事実
納税者らは、医療生活協同組合(消費生活協同組合法に基づく法人)の組合員であり、その持分を1口5万円(出資額)で他者に譲渡した。当該組合の定款では、脱退時の払戻額は「出資額」を限度とすると規定されていた。しかし、譲渡当時の組合の純資産評価額は約30億円に達しており、出資1口あたりの純資産価額は約33万円であった。課税当局は、本件持分の譲渡には出資額を超える資産価値の移転があるとし、財産評価基本通達に準じ、純資産価額を基に算出された価額を時価として更正処分を行った。
あてはめ
本件組合は営利を目的としないが、内部に多額の剰余金が蓄積されており、組合員は総会の承認を経て持分を譲渡することが可能であった。定款上の払戻制限は、あくまで脱退時の一時的な計算規定に過ぎず、組合員が有する「法人の資産に対する実質的な持分」としての価値を否定するものではない。本件持分には、将来の解散時の残余財産分配等に対する期待権に相当する価値が含まれており、出資額を大幅に上回る客観的価値が存在したといえる。そうであれば、取引相場のない株式の評価手法に準じ、純資産価額方式等を用いて算定された価額(1口約33万円)をもって時価と解するのが合理的である。納税者が主張する「出資額(5万円)」は、本件持分が有する客観的な交換価値を正当に反映したものとはいえない。
結論
本件各持分の譲渡所得の算定において、純資産価額を基礎とした時価評価を用いた課税処分は正当であり、納税者の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、法令や定款により払戻額に制限がある非営利法人の持分であっても、実質的な資産価値や譲渡可能性に着目し、税務上の時価評価を出資額に限定しない判断枠組みを示した。同種の組合持分譲渡における時価算定の指針となる。
事件番号: 平成20(行ヒ)139 / 裁判年月日: 平成23年2月18日 / 結論: 破棄自判
香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が国外財産の贈与を受けた場合において,当該贈与を受けたのが上記赴任の開始から約2年半後のことであり,通算約3年半にわたる赴任期間中の約3分の2の日数を香港の居宅に滞在して過ごし,その間に現地での業務に従事していたなど判示の事実関係の下では,上記期間中の約4分の1の日数を国…
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
事件番号: 昭和62(行ツ)142 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
所得税法六〇条一項一号にいう「贈与」には贈与者に経済的な利益を生じさせる負担付贈与を含まない。
事件番号: 平成14(行ヒ)112 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 破棄差戻
昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計…