所得税法六〇条一項一号にいう「贈与」には贈与者に経済的な利益を生じさせる負担付贈与を含まない。
所得税法六〇条一項一号にいう「贈与」と負担付贈与
所得税法60条1項1号
判旨
所得税法60条1項1号にいう「贈与」には、贈与者に経済的利益を生じさせる負担付贈与は含まれない。また、負担付贈与による資産の移転は同項2号に掲げる譲渡にも当たらないため、取得価額の引き継ぎに関する同条の適用はない。
問題の所在(論点)
負担付贈与によって資産を取得した場合、受贈者が譲渡所得を計算するに際して、所得税法60条1項各号に基づき、贈与者の取得価額を引き継ぐことができるか。特に、同項1号の「贈与」に負担付贈与が含まれるか、あるいは2号の「低額譲渡」に含まれるかが問題となる。
規範
所得税法60条1項1号にいう「贈与」とは、無償かつ無負担の純粋な贈与を指し、受贈者が贈与者の債務を肩代わりするなどの対価的意味を有する「負担付贈与」は含まれない。また、負担付贈与による資産の移転は、同条1項2号所定の「時価の2分の1に満たない対価による譲渡」にも原則として該当しない。
重要事実
上告人らは、訴外Dが負っていた合計2600万円の債務を履行することを条件として、本件土地の所有権(共有持分)の移転を受ける契約を締結した。この契約は負担付贈与契約の性質を有するものであった。上告人らは、本件土地の譲渡所得の計算において、所得税法60条1項(贈与等による資産の取得の場合の取得価額の引き継ぎ)の適用を前提とした申告を行ったが、税務署長は同条の適用を否定し、更正処分等を行った。
事件番号: 昭和54(行ツ)136 / 裁判年月日: 昭和56年6月26日 / 結論: その他
負担附贈与がされた場合における贈与税の課税価格は、右贈与にかかる財産の時価から当該負担額を控除した価額である。
あてはめ
本件における土地所有権の移転契約は、2600万円の債務引き受けを内容とする負担付贈与である。所得税法60条1項1号は、無償取得に伴う取得価額の引き継ぎを規定するものであるから、債務肩代わりという経済的利益を贈与者に生じさせる負担付贈与は同号の「贈与」には当たらない。また、当該移転が同条1項2号の譲渡に当たるという特段の事情も認められない。したがって、上告人らが本件土地を取得した際の取得価額は、贈与者の取得価額を引き継ぐのではなく、原則通り取得時の時価(負担額)等を基礎とすべきである。
結論
負担付贈与は所得税法60条1項1号の「贈与」に含まれず、同条の適用はない。したがって、同条の適用を否定した更正処分等は適法である。
実務上の射程
本判決は、受贈者が債務を負担する「負担付贈与」が所得税法上の「贈与」概念から除外されることを明確にした。答案上は、譲渡所得の計算(法33条)における取得価額(法38条)の算定にあたり、法60条1項による引き継ぎの可否を論じる際の必須の準拠枠組みとなる。受贈者が対価(債務引受等)を支払っている以上、純粋な無償取得とは性質が異なる点に留意して論証を構成する。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
事件番号: 平成13(行ヒ)276 / 裁判年月日: 平成17年2月1日 / 結論: 破棄自判
1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。 2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に…
事件番号: 平成8(行ツ)54 / 裁判年月日: 平成11年6月10日 / 結論: 棄却
相続財産に属する特定の財産を計算の基礎としない相続税の期限内申告書が提出された場合において、納税者が当該財産が相続財産に属さないか又は属する可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出したときは、国税通則法六五条四項にいう「正当な理由」がある。