死刑の量刑が維持された事例(堺の夫婦強盗殺人等事件)
判旨
被告人が深夜、警察官の制止を振り切って走行を続け、追跡を逃れる目的で自動車を加速させ、進行方向にいた警察官の夫人に衝突させて重傷を負わせた行為について、殺人未遂罪の成立を認めた第一審判決を維持した事例(最決平成22年10月11日)。
問題の所在(論点)
警察官の追跡から逃れるために自動車を加速・直進させ、路上にいた歩行者に衝突させた行為について、殺意(未必の故意)が認められるか。
規範
殺人罪(刑法199条)の成立には、死の結果発生の認識・認容という殺意が必要である。この殺意の有無は、凶器の性質、攻撃の部位、攻撃の態様、動機、犯行後の言動等の客観的事実を総合的に考慮して判断される。特に自動車を用いた場合、衝突の速度や態様から、相手方が死亡する蓋然性を認識しつつ敢えてこれを容認して走行したといえるかが、未必の故意の有無を画する基準となる。
重要事実
被告人は警察官の制止を逃れるため、執拗な追跡を受ける中で、時速約30kmから40kmまで加速した。進行方向には、逃走を阻止しようとする警察官の夫人が立っていたが、被告人は同人に衝突すれば死に至る可能性があることを認識しながら、停止したり回避したりすることなく直進し、同人に自車を衝突させて加療約1か月の重傷を負わせた。
あてはめ
被告人は、深夜の逃走中に警察官の夫人が進行方向に立ち塞がっていることを認識しており、衝突すれば生命に危険が及ぶことは明白であった。それにもかかわらず、追跡を免れるという自己の目的を優先し、減速どころか加速して直進している。このような攻撃的かつ危険な運転態様に鑑みれば、衝突による死亡の結果を容認していたと評価でき、殺意の存在が認められる。本件において、衝突を回避する余地がなかった等の特段の事情は認められない。
結論
事件番号: 平成18(あ)1372 / 裁判年月日: 平成22年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺人予備罪の成立が認められた事例(最決平成25年3月28日) 第1 事案の概要:被告人は、共犯者らと共謀し、特定の被害者を殺害する目的で、多量の睡眠薬を混入した飲料を用意した。さらに、犯行に使用する自動車や車両ナンバープレートを取得し、犯行現場の下見を行うなど、客観的に殺人の実行を容易にする準備を…
被告人の行為には殺人未遂罪(刑法199条、203条)が成立する。
実務上の射程
自動車を用いた犯行において、逃走目的であっても、相手との衝突を確実視しながら加速・直進する行為には、未必の殺意が肯定されやすい。司法試験においては、単なる過失運転致死傷罪や傷害罪にとどまらず、未必の故意による殺人未遂罪の成否を論じる際の有力な判断基準となる。
事件番号: 昭和23(れ)1680 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
被告人は巡査部長を射撃して、同人が被告人を追つかけることのできないようにしようと思つて、ことによつたら同人を射殺す結果になるかも知れないが、それもやむを得ないと考へ、ピストルを同人に向け發射し、同人が死んでしまつたのであるから、被告人が殺人罪に問われるのは當然である。
事件番号: 平成8(あ)482 / 裁判年月日: 平成12年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて悪質かつ重大な結果を招いた強盗殺人等の事案において死刑を科すことは、諸般の事情を考慮しても是認される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀の上、一人暮らしの従弟(36歳)をビニールひもで緊縛・絞殺して権利証等を強取し、死体を海浜に遺棄した(…
事件番号: 昭和24(れ)1072 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
檢事が現行犯人又は準現行犯人として逮捕された被疑者を受け取つたときは、檢事は舊刑訴法第一二九條に從い、兎も角訊問することが要求されているのであつて、訊問の結果勾留の必要がないと認めたときは直ちに釋放すべくその必要ありと認めたときは、現行犯手續の適否を考慮して刑訴應急措置法第八條第三號其の他に從つて適當な措置を講ずべきも…
事件番号: 平成12(あ)317 / 裁判年月日: 平成16年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の命を奪った強盗殺人等の事案において、冷酷かつ残虐な犯行態様、重大な結果、及び十分な反省が見られないこと等の諸事情を考慮し、死刑の選択を是認した。 第1 事案の概要:被告人は、路上で認めた浮浪者風の男性(第2事件)及び元同僚(第4事件)に対し、親切を装い睡眠薬を服用させて昏睡状態に陥れた上で、…