1 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)3条1項1号の規定によって相続により取得したものとみなされる生命保険契約の保険金であって年金の方法により支払われるもののうち有期定期金債権に当たる年金受給権に係る年金の各支給額については,被相続人死亡時の現在価値に相当する金額として相続税法24条1項1号所定の当該年金受給権の評価額に含まれる部分に限り,相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものとして,所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)9条1項15号の規定により所得税の課税対象とならない。 2 所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)207条所定の生命保険契約等に基づく年金の支払をする者は,当該年金が同法の定める所得として所得税の課税対象となるか否かにかかわらず,その支払の際,その年金について所得税法208条所定の金額を徴収し,これを所得税として国に納付する義務を負う。
1 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)3条1項1号の規定によって相続により取得したものとみなされる生命保険契約の保険金であって年金の方法により支払われるもののうち有期定期金債権に当たる年金受給権に係る年金の各支給額は,そのすべてが所得税の課税対象となるか 2 所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)207条所定の生命保険契約等に基づく年金の支払をする者は,当該年金が同法の定める所得として所得税の課税対象となるか否かにかかわらず,その年金について所得税の源泉徴収義務を負うか
(1につき)相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)3条1項1号,相続税法24条1項1号,所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)9条1項15号(2につき)所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)76条3項1号,所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)207条,所得税法208条
判旨
年金払特約付き生命保険契約に基づき支給される年金のうち、相続税の課税対象となる部分については、所得税法9条1項15号により所得税を課すことはできない。相続税と所得税の二重課税を排除すべきとの趣旨から、相続税の課税価格に含まれる現在価値相当分には所得税が非課税となる。
問題の所在(論点)
年金払特約付き生命保険契約に基づき受領する年金が、所得税法9条1項15号にいう「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」に含まれ、所得税が非課税となるか。相続税と所得税の二重課税排除の範囲が問題となる。
規範
所得税法9条1項15号の趣旨は、同一の経済的価値に対する相続税(又は贈与税)と所得税との二重課税を排除することにある。年金形式で支払われる保険金(年金受給権)のうち、相続税法24条1項等の規定により相続税の課税対象となる部分は「将来受け取る年金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額」である。したがって、各年金支給額のうち、上記現在価値に相当する部分は相続税の課税対象と同一の経済的価値といえるため、同号により所得税の課税対象とならない。
重要事実
夫Aは、自身を被保険者、妻(上告人)を保険金受取人とする年金払特約付き生命保険契約を締結し、保険料を負担していた。Aの死亡により、妻は毎年230万円を10年間受領する権利(本件年金受給権)を取得した。妻は相続税の申告において本件受給権の価額を課税価格に算入したが、所得税の申告では第1回目の年金230万円を収入に算入しなかった。これに対し税務署長が、当該年金は雑所得に当たるとして更正処分を行ったため、妻がその取消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件年金受給権は、相続税法3条1項1号により相続により取得したものとみなされる「保険金」に当たり、同法24条1項1号に基づき、将来の給付総額を死亡時の現在価値に引き直した価額が相続税の課税対象となっている。本件の第1回目年金は死亡日を支給日とするものであり、その支給額は死亡時の現在価値と一致する。そうすると、この年金額の全額が相続税の課税対象となった経済的価値そのものであると評価できる。したがって、この金額にさらに所得税を課すことは、同一の経済的価値に対する二重課税となり、所得税法9条1項15号に抵触する。
結論
本件年金の額はすべて所得税の課税対象とならない。したがって、これを雑所得として総所得金額に算入した更正処分は違法であり、取り消されるべきである。
実務上の射程
生命保険金に限らず、相続税の課税対象となった「権利」から生じる収益が所得税の対象となる際、二重課税排除の法理(所法9条1項15号)を適用する際のリーディングケースである。答案では、相続税の評価対象となった「元本(現在価値)」部分と、それ以降の「運用益」部分を区別し、前者についてのみ非課税となる点に注意して論述する。
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 昭和40(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和47年12月26日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成21(行ヒ)65 / 裁判年月日: 平成22年10月15日 / 結論: 棄却
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