一、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号は、被相続人の死亡後退職手当金等の支給額が確定され、これにより相続人等が支給者に対して直接に右退職手当金等請求権を取得した場合についても、これを相続財産とみなして相続税を課することとしたものであつて、生前退職の場合を含み、これを死亡退職の場合に限ると解すべきではない。 二、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号により相続財産とみなされるべきものであるというためには、被相続人の死亡による相続開始の際、少なくとも退職手当金等の支給されること自体が当然に予定された場合であることを要し、また、相続税として課税可能な期間内に支給額が確定する場合でなければならない。 三、甲会社の役員乙が退職後死亡して相続が開始したが、当時同会社は戦後不況の只中にあり、また、かねて制限会社、次いで持株会社に指定されていたため、乙に対する退職手当金等の支給自体もなんら確定されず、乙の死亡後四年以上を経て開かれた株主総会において、同人に荒する退職金贈呈の件が決議され、その後取締役会において支給額が確定した等判示の事情があるときは、乙の相続人に対する退職慰労金名義の支給は、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号に該当しない。
一、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号の趣旨 二、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号の趣旨により相続財産とみなされるものの範囲 三、旧役員の相続人に対する退職慰労金の支給が旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号に該当しないとされた事例
旧相続税法(昭和22年法律第87号)4条1項4号
判旨
生前退職した被相続人に代わり相続人等が受領した退職手当金等は、相続開始時に支給が当然に予定され、かつ相続税の課税可能期間内に支給額が確定した場合には、みなし相続財産として相続税の課税対象となる。
問題の所在(論点)
被相続人が生前に退職し、退職手当金等の請求権を確定させずに死亡した後、相続人等に対して支給された金員が、旧相続税法4条1項4号(みなし相続財産)に該当するか。
規範
旧相続税法4条1項4号(現3条1項2号)が退職手当金等をみなし相続財産とした趣旨は、実質的に相続により財産を取得したのと同視しうる場合に、所得税ではなく相続税を課す点にある。したがって、本規定は死亡退職に限らず生前退職の場合にも適用されるが、その範囲は、①相続開始の際、支給規定や慣行等により退職金の支給自体が当然に予定されており、かつ、②相続税として課税可能な期間内に支給額が確定した場合(現行法上は死亡後3年以内)に限られる。
事件番号: 昭和41(行ツ)102 / 裁判年月日: 昭和47年12月26日 / 結論: 棄却
一、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者から他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものと解すべきである。 二、甲所有の不動産が、代金の支払は長期にわたる割賦弁済による約定のもとに、乙に売り渡された場合であつても、売買契約の成立当日所有権移…
重要事実
被相続人Dは、昭和22年7月に会社を退職し、同年11月に死亡した。当時、会社は戦後不況や法令による制限により、役員への退職金支給が禁止・制限されていた。Dの死亡から4年以上経過した昭和27年、株主総会および取締役会において、はじめてDに対する退職慰労金をその相続人らへ支給することが決議・実施された。課税当局はこれをみなし相続財産として相続税を課したが、相続人らは生前退職かつ長期間経過後の支給であることを理由にこれを争った。
あてはめ
本件において、Dの死亡による相続開始当時、会社は経済的・法的制約下にあったため、退職金の支給自体が何ら確定していなかった。また、実際に支給が決議されたのは死亡から4年以上が経過した後であった。このような状況下では、相続開始時に「退職金の支給が当然に予定されていた」とはいえず、また相続税の適切な課税期間内に支給が確定したとも認められない。したがって、本件金員は実質的に相続財産と同視すべき関係にはない。
結論
本件退職慰労金の支給は、旧相続税法4条1項4号のみなし相続財産には該当せず、相続税の課税対象とはならない(相続人等の一時所得として所得税の対象となる)。
実務上の射程
本判決は、生前退職における「みなし相続財産」の該当性を判断する枠組みを示したものである。実務上は、現行相続税法3条1項2号の「3年以内」という期間制限の解釈の基礎として重要であり、相続開始時点での「支給の蓋然性(当然の予定)」の有無が、一時所得か相続税かの分水嶺となる。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
事件番号: 平成20(行ヒ)16 / 裁判年月日: 平成22年7月6日 / 結論: 破棄自判
1 相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)3条1項1号の規定によって相続により取得したものとみなされる生命保険契約の保険金であって年金の方法により支払われるもののうち有期定期金債権に当たる年金受給権に係る年金の各支給額については,被相続人死亡時の現在価値に相当する金額として相続税法24条1項1号所定の当該年…
事件番号: 昭和60(行ツ)125 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 破棄差戻
租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁…