一、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者から他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものと解すべきである。 二、甲所有の不動産が、代金の支払は長期にわたる割賦弁済による約定のもとに、乙に売り渡された場合であつても、売買契約の成立当日所有権移転登記が経由され、当該不動産の所有権が確定的に乙に移転したときは、甲につき、譲渡所得の全部が右契約(登記)の日の属する年度に発生したものとして、これに対する課税をすべきである。
一、譲渡所得に対する課税の趣旨 二、不動産の売買において代金の支払が長期の割賦弁済による場合と譲渡所得の帰属年度
旧所得税法(昭和22年法律第27号)9条1項8号,旧所得税法(昭和22年法律第27号)10条1項
判旨
譲渡所得課税は資産の増加益を移転時に清算する趣旨であり、代金が割賦払いであっても、原則として譲渡時の属する年度に全額を「収入すべき金額」として課税する。現行法上の延払条件付販売等の特例は、棚卸資産以外の一般資産の譲渡には類推適用されない。
問題の所在(論点)
資産の譲渡代金が長期割賦払いとされる場合、所得税法上の「収入すべき金額」として、譲渡時に全額を計上すべきか、それとも分割金の各支払期に帰属させるべきか。また、棚卸資産に関する延払特例の類推適用の可否が問題となる。
規範
譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりにより所有者に帰属する増加益(キャピタル・ゲイン)を所得とし、資産が所有者の支配を離れて他に移転する機会に、これを清算して課税する趣旨である。したがって、所得の実現時期は原則として資産の譲渡時(所有権移転時)であり、代金の支払方法が長期の割賦弁済であっても、弁済期ごとに分割して課税することは制度の本旨に反する。また、棚卸資産に関する延払特例(現行法65条等)を一般の資産譲渡に類推適用することはできず、納税の困難は事実上の徴収猶予等の納付方法の緩和により解決すべきである。
事件番号: 昭和41(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)第五条の二の規定は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とし、それを右資産の他への移転の時期において課税の対象とするのを相当と認め、それが対価を伴わずに移転される場合にもいわゆる譲渡所得に準じて取り扱うべきものとしたのであつて、所得のないところに課税所得の存在を擬…
重要事実
亡Dは、昭和33年11月27日に不動産を3055万2000円で売却し、同日、買主へ所有権移転登記を経由した。代金支払は、当日手附金100万円、残金は翌月以降毎月50万円ずつの分割払いとされた。Dは契約翌日に死亡し、相続人である上告人は、昭和33年分の所得として全額を申告したが、同年度の実受領額は150万円に過ぎなかったため、更正請求を行った。その後、遺留分減殺請求の結果、Dの取得分は減少したものの、課税当局は譲渡時の属する昭和33年度の総収入金額として全額(遺留分相当控除後)を対象とする更正処分を行った。
あてはめ
本件不動産は契約当日、手附金の支払と同時に所有権移転登記が経由されており、同日に所有権は確定的に移転して「資産の譲渡」が行われたといえる。譲渡所得課税の清算課税的性格からすれば、この譲渡時点で増加益が一挙に実現したものとみなされる。上告人は、初年度の受領額に比して税額が過大であり不合理であると主張するが、これは制度の建前上やむを得ない。本件では実際にも、税金相当分を随時支払う特約に基づき、納税資金として約661万円の内払いを受けており、実質的な納税困難も認められない。棚卸資産の特例は政策的な性質を持つため、性質の異なる一般資産の譲渡に類推する余地はない。
結論
不動産譲渡代金が割賦払いであっても、譲渡があった年度の総収入金額として全額を算入すべきであり、本件更正処分は適法である。
実務上の射程
譲渡所得の帰属時期に関する原則的判断枠組み(清算課税説)を示す重要判例。納税資金不足という実務上の不都合は、実体法上の帰属時期の操作ではなく、手続法上の徴収猶予等で解決すべきことを明示しており、所得税法における権利確定主義の具体化として機能する。
事件番号: 昭和40(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和47年12月26日 / 結論: 棄却
一、旧相続税法(昭和二二年法律第八七号)四条一項四号は、被相続人の死亡後退職手当金等の支給額が確定され、これにより相続人等が支給者に対して直接に右退職手当金等請求権を取得した場合についても、これを相続財産とみなして相続税を課することとしたものであつて、生前退職の場合を含み、これを死亡退職の場合に限ると解すべきではない。…
事件番号: 昭和39(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和40年9月24日 / 結論: 棄却
第三者の債務の担保に供された抵当不動産が競売に付せられ競落代金が納付された場合には、求償権が事実上取立不能であつても、譲渡所得は成立する。
事件番号: 平成20(行ヒ)419 / 裁判年月日: 平成22年3月30日 / 結論: 破棄差戻
1 県が施行する道路事業の用地として所有地を買い取られたことに伴い,県から同土地上に存する所有建物を移転することに対する補償金の支払を受けた個人が,当該建物を第三者に譲渡して上記土地外に曳行移転させた場合において,上記補償金のうちに上記曳行移転の費用に充てられた金額があるときは,当該金額について所得税法44条の適用を受…
事件番号: 昭和50(行ツ)123 / 裁判年月日: 昭和53年2月24日 / 結論: 破棄自判
一 賃料増額請求が争われた場合における増額分の賃料は、原則として、その債権の存在を認める裁判が確定した日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべきである。 二 賃料増額請求にかかる増額分の賃料の支払を命じた仮執行宣言付判決に基づき支払を受けた金員は、その受領の日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべき…