虚偽記載半期報告書提出罪及び虚偽記載有価証券報告書提出罪について,当該会社と会計監査契約を締結していた監査法人に所属する公認会計士に会社代表取締役らとの各共同正犯の成立を認めた原判断が是認された事例
刑法60条,刑法65条1項,証券取引法(平成17年法律第87号による改正前のもの)24条1項,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)24条の5第1項,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)197条1項1号,証券取引法(平成17年法律第87号による改正前のもの)198条6号,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)207条1項1号,証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)207条1項2号
判旨
業務上の任務に背き、他者の利益を図り本人に損害を与える目的(図利加害目的)をもって、実態のない形式的な取引を行い、会社資金を流出させた行為は、背任罪(刑法247条)を構成する。本件では、融資の形式を採りつつも、返済の意思や能力がない相手方に対し、十分な担保を確保せずに多額の資金を交付した行為について、背任罪の成立を認めた原判断を維持した。
問題の所在(論点)
代表取締役が、回収の見込みがないことを知りながら、形骸化した担保のみで多額の融資を実行し、社外に資金を流出させた行為について、背任罪の「任務違背行為」および「図利加害目的」が認められるか。
規範
背任罪(刑法247条)の成立要件は、①他人の事務を処理する者が、②自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、③その任務に背く行為をし、④本人に財産上の損害を加えることである。任務違背行為とは、事務の内容、性質、法令、契約等の諸事情に照らし、信義則上当然になすべき行為をしないこと、又はしてはならない行為をすることを指す。特に融資の場面では、債権回収の見込みや担保の適否を適正に評価すべき義務への違反が中核となる。
重要事実
被告人はA社の代表取締役として同社の事務全般を統括していた。被告人は、Bに対し20億円を融資するにあたり、Bに返済の意思や能力がなく、また提供された「パーソナルチェック」が担保としての実質的価値を欠いていることを認識していた。しかし、被告人はBと共謀し、実態は運用利益を得る見込みのない資金提供であるにもかかわらず、形式上は適正な融資を装うため、虚偽の収支報告書や資金繰表をA社に提出させた。その上で、20億円をB側の支配下に流出させ、結果としてA社に同額の損害を与えた。
事件番号: 平成18(あ)2174 / 裁判年月日: 平成19年7月12日 / 結論: 棄却
1 出来高に関し他人に誤解を生じさせる目的は,価格操作ないし相場操縦の目的を伴わない場合でも,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項柱書きにいう「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」に当たる。 2 いわゆる自己両建ての有価証券オプション取…
あてはめ
被告人はA社の代表取締役であり、会社の財産を適正に管理・運用すべき立場にある(①)。Bに返済能力がなく、パーソナルチェックも無価値であることを知りながら、あえて巨額の資金を交付したことは、善管注意義務に著しく反する「任務違背行為」にあたる(③)。また、適正な融資を装うために虚偽書類を提出させるなどの隠蔽工作を行っていることから、A社に損害を与え、Bに不当な利益を得させる「図利加害目的」も明らかである(②)。20億円もの資金が回収不能な状態で流出したことは、A社に対する「財産上の損害」に他ならない(④)。
結論
被告人の行為は、A社の代表取締役としての任務に背き、Bの利益を図りA社に損害を与える目的で行われたものであり、背任罪が成立する。したがって、被告人を処罰した原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、経営判断の裁量が認められやすい取締役の融資判断であっても、客観的に回収不能であることが明白で、かつ手続の不透明性や隠蔽工作が認められる場合には、刑法上の背任罪が厳格に適用されることを示したものである。
事件番号: 平成19(あ)818 / 裁判年月日: 平成21年12月7日 / 結論: 破棄差戻
旧株式会社日本債券信用銀行の平成10年3月期の決算処理における支援先等に対する貸出金の査定に関して,資産査定通達等によって補充される平成9年7月31日改正後の決算経理基準は,新たな基準として直ちに適用するには明確性に乏しく,従来の税法基準の考え方による処理を排除して厳格に上記改正後の決算経理基準に従うべきことも必ずしも…
事件番号: 平成10(あ)1146 / 裁判年月日: 平成11年6月10日 / 結論: 破棄差戻
一 証券取引法一六六条二項一号にいう「業務執行を決定する機関」は、商法所定の決定権限のある機関には限られず、実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りる。 二 証券取引法一六六条二項一号にいう株式の発行を行うことについての「決定」をしたとは、業務執行を決定する機関において、株式の…