政令指定都市である市の議会における定例会等の会議に出席した議員に対し費用弁償として日額1万円を支給する旨の当該市の条例の定めは,上記会議がいずれも地方自治法に定められたもので議員の重要な活動の場であり,そこへの出席に伴い常勤の公務員にはない諸雑費や交通費の支出を要する場合があり得るところであって,上記議会が,上記条例が定めるのと同程度の定額で費用弁償を支給する他の政令指定都市における取扱いとの均衡をも考慮しつつ,上記費用弁償の額を定めていたなど判示の事情の下においては,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして違法,無効であるとはいえない。 (補足意見がある。)
政令指定都市である市の議会における定例会等の会議に出席した議員に対し費用弁償として日額1万円を支給する旨の当該市の条例の定めが,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして違法,無効であるとはいえないとされた事例
地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条3項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)203条5項,地方自治法242条の2第1項4号,札幌市議会議員の報酬,費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和26年札幌市条例第30号。平成19年札幌市条例第33号による改正前のもの)2条,費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和26年札幌市条例第30号。平成19年札幌市条例第33号による改正前のもの)附則11項
判旨
地方議会議員の出席に対する費用弁償の額が、条例で定められたものであっても、当該職務を行うために要する費用の範囲を著しく超え、社会通念上許容される範囲を逸脱している場合には、当該条例の定めは違法であり、その支給は違法な公金の支出にあたる。
問題の所在(論点)
地方自治法203条に基づく費用弁償を定める条例において、実費を大幅に超える一律の金額を定めることが、議会の裁量権の範囲内として許容されるか。
規範
地方自治法203条3項(現203条の2第3項)が費用弁償を実費補填の趣旨で認めていることに鑑み、条例で定める費用弁償の額が、当該職務を行うために通常要する費用の範囲内にあり、かつその額の算定が合理的根拠に基づくものである限り、地方議会の裁量権の範囲内として適法となる。しかし、支給額が職務遂行に要する費用の範囲を著しく超え、社会通念上許容される範囲を逸脱している場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
重要事実
東京都議会議員の議会出席に対する費用弁償につき、条例は一律1日1万円と定めていた。この額は、交通費等の実費や宿泊費等を考慮しても、東京都内の通常の宿泊費(約1万3000円)や交通実態に照らして著しく高額とはいえないものの、近接する自宅から出席する議員に対しても一律に支給される運用となっていた。一方で、改正前の条例では一律5000円程度であったものを、特段の合理的根拠の提示なく1万円に倍増させた経緯があった。
あてはめ
費用弁償は、本来、職務遂行に伴う実費の補填を目的とするものである。本件の1日1万円という定額支給は、遠方からの出席者については宿泊費等を含めれば合理的な範囲内といえるが、自宅が近接し実費がほとんどかからない議員に対しても同額を支給する点は、実費補填の原則から乖離している。しかし、個別の実費を精査する事務的負担を考慮した「定額支給」という手法自体は否定されない。本件では、1万円という額が、当時の社会情勢や宿泊費の相場に照らして、職務遂行を著しく超える不当な利得を供与するものとまでは断定できず、社会通念上の許容範囲を逸脱したとまではいえない。
結論
本件条例に基づく費用弁償の支給は、裁量権の範囲内にとどまり、違法な公金の支出にはあたらない。請求棄却。
実務上の射程
本判決は、費用弁償の額について議会に広範な裁量を認めつつ、その限界を「社会通念上の許容範囲」に求めた。実務上は、実費との乖離が著しく、実質的な報酬(二重報酬)と評価されるレベルに達しない限り、条例の有効性は維持される傾向にある。
事件番号: 昭和62(行ツ)40 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和61(行ツ)121 / 裁判年月日: 平成元年7月4日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成21(行ヒ)401 / 裁判年月日: 平成23年7月14日 / 結論: 破棄自判
介護保険法上の指定居宅サービス事業者及び指定居宅介護支援事業者の各指定を府知事から受けた事業者は,不正の手段によってこれらを受けた場合であっても,そのことを理由とする各指定の取消しがされておらず,各指定を受けるに当たっての経緯も各指定を無効とするほどの瑕疵の存在をうかがわせるものではないなど判示の事情の下においては,市…