町が地元出身衆議院議員の大臣就任を祝うため提燈行列及び立食パーティなどを内容とする二日間の祝賀式典を挙行し、そのために約三二六万円の公金を支出した場合において、右議員は長年にわたり町の発展のため尽力してきたものであるところがら、各種団体の多数の代表の提案に基づき右式典が計画されたものであり、これに関する予算案は議会の圧倒的多数で可決されており、また、右式典には多数の町民が参加したなど原判示の事実関係(原判決参照)の下においては、右祝賀式典の挙行及びこれに伴う右公金の支出は、社交儀礼の範囲を逸脱しているとまでは断定することができず、違法とはいえない。 (反対意見がある。)
町による地元出身衆議院議員の大臣就任祝賀式典の挙行及びこれに伴う公金の支出が違法ではないとされた事例
地方自治法2条2項,地方自治法232条1項,地方自治法242条の2第1項
判旨
地方公共団体が功労者等のために行う記念行事や公金支出は、社会通念上相当と認められる社交儀礼の範囲内であれば適法である。本件の大臣就任祝賀式典への支出は、政治宣伝活動としての実態や参加の強制が認められない以上、社交儀礼の範囲を逸脱せず違法ではない。
問題の所在(論点)
地方公共団体が特定の政治家の大臣就任を祝う式典に公金を支出することが、社交儀礼の範囲を逸脱し、地方自治法上の「違法な公金の支出」に該当するか。また、それが住民に対する思想や表現の強制として憲法19条、21条に違反するか。
規範
地方公共団体による公金支出が社交儀礼として適法か否かは、当該行事の目的、効果、内容、規模、公金の支出額、当該地方公共団体の財政規模、従前の慣行、関係者と当該地方公共団体とのつながりの程度、住民の意識等の諸般の事情を総合考慮し、社会通念上相当と認められる範囲内(社交儀礼の範囲内)にあるかによって判断する。
重要事実
町出身の衆議院議員の大臣就任を祝うため、町が祝賀式典を主催し、公金約326万円を支出した。内容は、園児・学童による出迎え、約4000人の町民による提灯行列、約1000人が参加する立食パーティー等であった。町民は、本件支出が政治宣伝活動への公金投入であり、思想・良心の自由(憲法19条)や表現の自由(21条)を侵害する違法な支出であるとして訴えを提起した。
あてはめ
まず、本件式典は特定の政党や政治家を利するための政治宣伝活動として行われたものではなく、住民の参加も強制されていないため、憲法19条・21条違反の主張は当たらない。次に、社交儀礼の範囲内かについて検討すると、本件支出額(歳出予算の0.16%)や内容は、金額面や配慮において検討の余地はあるものの、地元出身者の大臣就任という事績に照らせば、直ちに社会通念上の相当性を欠くとまでは断定できない。したがって、本件支出は社交儀礼の範囲を逸脱しているとまではいえず、違法とは認められない。
結論
本件祝賀式典及びこれに伴う公金支出は社交儀礼の範囲を逸脱しているとはいえず、違法ではない。請求棄却。
実務上の射程
地方公共団体の支出の裁量を広く認めた判例。答案では「社交儀礼の範囲内か」を検討する際の総合考慮要素(目的・規模・支出額等)を引用し、本件のような政治的色彩を帯び得る事案であっても、実質的な政治宣伝や強制がない限りは裁量が認められやすい方向で活用する。
事件番号: 平成20(行ヒ)97 / 裁判年月日: 平成21年4月28日 / 結論: 破棄差戻
市の発注したごみ焼却施設の建設工事に関し業者らが談合をしたため市が損害を被ったにもかかわらず,市長が上記業者らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,市の住民が地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,怠る事実に係る相手方である上記業…
事件番号: 平成21(行ヒ)211 / 裁判年月日: 平成22年3月30日 / 結論: 破棄自判
政令指定都市である市の議会における定例会等の会議に出席した議員に対し費用弁償として日額1万円を支給する旨の当該市の条例の定めは,上記会議がいずれも地方自治法に定められたもので議員の重要な活動の場であり,そこへの出席に伴い常勤の公務員にはない諸雑費や交通費の支出を要する場合があり得るところであって,上記議会が,上記条例が…