松一本を盗伐した者が杉四七石、松二五石の盗伐の告訴を所有者から受けた場合には、実質と右告訴の内容とを異にし、これにより取調を受ける被告訴者の苦痛の程度もまた相違するから、右不当な内容の告訴により受ける精神的損害につき不法行為が成立しうる。
一 原告代理人と被告代理人を取り違えた調書の記載が明白な誤記と認められ判決に影響がないとされた事例。 二 不当な告訴によつて不法行為が成立するとされた事例。
民訴法394条,民訴法143条,民法709条
判旨
不当な告訴に基づく損害賠償責任について、真実は僅かな盗伐事実しか存在しないにもかかわらず、多量の盗伐があったとして告訴した行為は、告訴内容の相違により被告訴人が受ける精神的苦痛の程度が異なる以上、不法行為を構成する。
問題の所在(論点)
事実の一部(松1本の盗伐)が真実である場合において、それを大幅に上回る分量の盗伐事実を記載してなされた告訴が、民法709条の不法行為を構成するか。
規範
告訴が不法行為を構成するか否かは、告訴内容の真実性および告訴に至る態様の相当性によって判断される。特に、一部に真実の事実が含まれる場合であっても、告訴された事実の量や程度が真実と著しく異なり、それによって被告訴人が受ける精神的苦痛の程度が本来あるべき程度を超えると認められる場合には、その告訴は「軽卒」であり、不当な告訴として賠償義務を負う。
重要事実
被告(上告人)は、原告(被上告人)が被告所有の山林から杉約47石、松約25石(時価10万9600円相当)を盗伐したとして警察署長に告訴した。しかし、実際に原告が盗伐したのは直径9寸の松1本のみであり、その他の立木は原告自身の所有地内に生立していたものであった。原告は本件告訴により警察や検察で度重なる取調べを受け、精神的苦痛を被ったとして損害賠償を求めた。
事件番号: 昭和33(オ)376 / 裁判年月日: 昭和35年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約書に記載された地番や地積が実際の対象物件と相違している場合であっても、当事者間の合意の対象が別の土地であると客観的に認められるときは、証拠に基づき契約対象を真実の物件へと確定することができる。 第1 事案の概要:被上告人らは、所有するa番山林(6反6畝20歩)を、a番の1とa番の2に分筆し…
あてはめ
本件において、被告が告訴した盗伐量は、実際に原告が行った松1本の盗伐という事実と比較して極めて多量である。告訴の内容がこのように真実と大きく異なる場合、それに基づき実施される捜査や取調べの範囲・態様も、本来あるべき範囲を逸脱せざるを得ない。その結果、被告訴人が受ける精神的苦痛の程度は、松1本の盗伐に対する正当な告訴の場合と比較して著しく増大したものといえる。したがって、このような告訴は軽卒なものとして不当であり、不法行為上の過失が認められる。
結論
告訴内容が真実の範囲を著しく超え、被告訴人に過大な精神的苦痛を与えた本件告訴は不当なものとして不法行為を構成し、被告は損害賠償義務を負う。
実務上の射程
告訴・告発が不当とされる場合の判断基準を示す。一部に真実が含まれていても、誇大な事実を摘示して告訴した場合には、その差異によって生じた損害について賠償責任が生じ得る点に注意が必要である。司法試験においては、不法行為の成立要件(違法性・過失)の具体化として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)494 / 裁判年月日: 昭和39年6月11日 / 結論: 棄却
附近に類似のものがなく、かつ容易に動かしがたい大石を境界確定の基点とすることは、適法である。
事件番号: 昭和35(オ)1041 / 裁判年月日: 昭和38年3月29日 / 結論: 棄却
原判決が山林境界の基点として判示する山頂の檜立木根元とは、該立木の根元の中心点をいうものと解するのが相当であり、主文不明確の違法は生じない。
事件番号: 昭和37(オ)490 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
境界確定の訴における請求は、不明な境界を確定することを求める点にあり、いずれの線が本来の境界であるかに関する当事者の主張は、ただ事実上の申述の一部にすぎない。