判旨
売買契約書に記載された地番や地積が実際の対象物件と相違している場合であっても、当事者間の合意の対象が別の土地であると客観的に認められるときは、証拠に基づき契約対象を真実の物件へと確定することができる。
問題の所在(論点)
売買契約書に登記簿上の地番等と異なる記載(誤記)がある場合、契約の目的物をどのように確定すべきか。
規範
契約の解釈においては、書面の形式的な記載のみにとらわれず、契約に至る経緯、当事者の意図、他に当該対象となり得る土地の存否などの諸事情を総合して、当事者間の合意の真実の内容(合理的な意思)を確定すべきである。
重要事実
被上告人らは、所有するa番山林(6反6畝20歩)を、a番の1とa番の2に分筆した上で、後者を上告人に売り渡した。しかし、売買契約書には対象地が「b番地1の内約5反8畝歩」と誤って記載されていた。上告人は、自身が主張するc番山林が売買対象に含まれていたと主張し、登記や認定の誤りを争ったが、実際には当時、本件以外に当事者間で土地の売買が行われた事実はなかった。
あてはめ
本件では、登記簿謄本によりa番山林がa番の1・2に分筆された事実が確認できる。契約書には「b番地」と記載されているものの、証人Dの証言や被上告人Bの供述を総合すると、当事者間に本件土地以外の売買が存在しなかったことが認められる。したがって、契約書上の「b番地」という記載は単純な誤記であり、真実の売買対象はa番の2山林であると解するのが相当である。上告人が主張するc番山林が元地に含まれていた等の事実は証拠上否定される。
結論
契約書上の記載に誤りがあっても、周辺事情から真実の合意対象が特定できる以上、当該対象物件を基準とした事実認定は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和35(オ)1041 / 裁判年月日: 昭和38年3月29日 / 結論: 棄却
原判決が山林境界の基点として判示する山頂の檜立木根元とは、該立木の根元の中心点をいうものと解するのが相当であり、主文不明確の違法は生じない。
契約書の記載と実態が異なる「表示の錯誤」や目的物の特定が争点となる事案で活用できる。特に、不動産取引において地番の誤記があっても、他に売買対象となり得る土地が存在しない等の事情(唯一性)があれば、契約の有効性や対象物件の確定を維持する根拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和40年2月18日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和36(オ)26 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事訴訟の判決主文における土地の表示は、添付図面上の地形、地物、方位、距離、および理由中の説示を総合して現地を具体的に特定できる限り、明確性の要件を満たす。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決が是認した主文において、係争地の範囲が不明確であると主張して上告した。問題となった土地の特定について、…
事件番号: 昭和37(オ)965 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 棄却
松一本を盗伐した者が杉四七石、松二五石の盗伐の告訴を所有者から受けた場合には、実質と右告訴の内容とを異にし、これにより取調を受ける被告訴者の苦痛の程度もまた相違するから、右不当な内容の告訴により受ける精神的損害につき不法行為が成立しうる。