原判決が山林境界の基点として判示する山頂の檜立木根元とは、該立木の根元の中心点をいうものと解するのが相当であり、主文不明確の違法は生じない。
山林境界の基点たる立木の「根元」の意義が不明確ではなくて原判決の主文不明確の違法がないとされた事例。
民訴法191条1項1号,民訴法225条
判旨
境界確定訴訟において、境界の基準点となる立木の「根元」とは当該立木の根元の中心点を指すものと解される。また、事実認定の過程で立木の樹齢等に些少の誤認があっても、諸般の事情から境界確定の結論に影響しない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
境界確定判決における「根元」という表示の明確性と、境界認定の基礎となる立木の樹齢等の事実認定に誤りがある場合に判決の破棄事由となるか。
規範
境界確定訴訟における境界線の特定において、特定の立木の「根元」を基準とする場合、それは当該立木の「根元の中心点」を指す。また、証拠の取捨選択および事実認定は裁判所の専権に属し、認定された樹齢などの具体的数値に一部誤りがあったとしても、他の証拠や諸般の事実を総合して境界確定の判断が首肯できる場合には、その誤りは判決に影響を及ぼすべき違法(民事訴訟法第401条等参照)には当たらない。
重要事実
上告人と被上告人の所有する隣接地(a番地とb番地のc地)の境界が争われた事案。原審は、山林頂上にある樹齢約40年の檜立木の根元を含む(A)(B)(C)(D)線を境界と確定した。これに対し上告人が、①「根元」という表現は主文不明確である、②当該立木の樹齢や植林時期の認定に誤りがあり、かつ周辺土地(d、e地)の公簿面積との整合性が考慮されていないとして、理由不備や判断遺脱を理由に上告した。
事件番号: 昭和33(オ)376 / 裁判年月日: 昭和35年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約書に記載された地番や地積が実際の対象物件と相違している場合であっても、当事者間の合意の対象が別の土地であると客観的に認められるときは、証拠に基づき契約対象を真実の物件へと確定することができる。 第1 事案の概要:被上告人らは、所有するa番山林(6反6畝20歩)を、a番の1とa番の2に分筆し…
あてはめ
まず、主文に示された「根元」は立木の中心点を指すと解するのが相当であり、不明確ではない。次に、樹齢の認定について、原審が本件立木と隣接地の伐根の樹齢に差異があるとした認定は、証拠に照らし正当である。仮に正確な数値に誤認があったとしても、周辺の伐採状況や証人尋問の結果など諸般の事実を総合すれば、被上告人主張の境界線を正当とした結論を導くことが可能である。また、公簿面積との不一致についても、上告人側の主張を裏付ける証拠がない以上、境界認定を左右するものではない。
結論
境界の基準点としての「根元」は中心点を指し明確である。また、樹齢等の事実認定に些少の誤りがあっても、結論に影響しない限り違法とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
境界確定訴訟における判決主文の特定度合いを示す事例である。樹齢や面積などの間接事実の認定に誤りがあっても、境界を特定するに足りる他の証拠がある場合には、直ちに「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」にはならないという事実認定の合理的裁量を認めている。
事件番号: 昭和31(オ)866 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 破棄差戻
主文に表示された境界線の基点が、判決理由および添付図面と対照しても、現地のいずれの地点にあたるかを確定しえないときは、当事者間ではその基点の位置につき争いがなかつたとしても、主文不明確の違法を免れない。