登記名義は被告の弟名義となつており、真実の所有者が被告であるとの認定もない山林については、被告は法律上何らの利害関係をも有しないから、被告が原告の右所有権を争うからといつて、それにより原告として不利益をこうむるものとは認め難く、原告が被告に対し右山林の所有権確認を求める訴は利益を欠くものと判断するのが正当である。
確認の利益を欠くものとされた事例。
民訴法225条
判旨
所有権確認の訴えにおいて、被告が原告の権利を否認していても、被告自身が当該権利を有さず、かつ法律上の利害関係も有しない場合には、原告の権利者としての地位に現実の危険が生じているとはいえず、確認の利益を欠く。
問題の所在(論点)
確認の訴えにおいて、被告が「対象物は自己の所有ではなく、第三者の所有である」と主張して原告の所有権を否認する場合、確認の利益(民事訴訟法134条参照)が認められるか。
規範
確認の訴えにおける「確認の利益」が認められるためには、被告が原告の権利を否認する結果、原告の権利者としての地位に危険・不安定等、何らかの不利益を及ぼすおそれが現に存在する場合であることを要する。被告が当該権利が自己に帰属する旨を主張する場合のみならず、第三者の権利である旨を主張する場合であっても、右の危険・不安定が存在すれば足りるが、被告が対象物に対し法律上何らの利害関係も有しない場合には、特段の事情のない限り、原告の地位に不利益を及ぼすおそれがあるとは認められない。
重要事実
上告人は、山林の所有権が自己にあることの確認を求め、被上告人(被告)に対して本件訴訟を提起した。これに対し、被上告人は当該山林が自己の所有ではなく、その長男(訴外D)の所有である旨を主張して上告人の所有権を争った。当該山林は登記簿上も長男Dの所有名義となっており、被上告人が真実の所有者であると認めるに足りる証拠はなく、被上告人は当該山林に対し法律上の利害関係を有していなかった。
あてはめ
本件において、被上告人は係争山林が長男Dの所有であると主張して上告人の所有権を否認しているが、被上告人自身が当該山林について所有権等の法律上の利害関係を有している事実は認められない。また、登記名義も第三者である長男Dにある。そうであれば、被上告人が上告人の所有権を争っているという事実があったとしても、それによって上告人の所有者としての地位に現実的な危険や不安定な状態が生じているとは認め難い。したがって、被上告人を相手方として所有権の確認を求めることは、上告人の権利の不安定を除去するために有効適切な手段とはいえない。
結論
被上告人を相手方とする所有権確認の訴えは、確認の利益を欠く不適法なものとして却下されるべきである(本件では上告棄却)。
実務上の射程
本判決は、確認の利益の三要素(対象の適切、方法の適切、即時確定の利益)のうち「被告適格(方法の適切)」に関連する。確認の訴えの被告は、原告の権利を否定し、それにより原告の地位を不安にさせている者である必要がある。本件のように、被告が単に口頭で否認するだけで、権利の帰属主体でも利害関係人でもない場合には、真の権利主体等を相手にすべきであり、確認の利益が否定される。答案上は、紛争の抜本的解決に資するかという観点から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)938 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: その他
境界確定訴訟の控訴裁判所は、第一審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第一審判決を変更して、正当と判断する線を境界と定めるべきのものであり、その結果が実際上控訴人にとり不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利である場合であつても、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)1041 / 裁判年月日: 昭和38年3月29日 / 結論: 棄却
原判決が山林境界の基点として判示する山頂の檜立木根元とは、該立木の根元の中心点をいうものと解するのが相当であり、主文不明確の違法は生じない。