主文に表示された境界線の基点が、判決理由および添付図面と対照しても、現地のいずれの地点にあたるかを確定しえないときは、当事者間ではその基点の位置につき争いがなかつたとしても、主文不明確の違法を免れない。
境界確定判決の主文が不明確な事例。
民訴法191条
判旨
境界確定訴訟において、判決主文および図面上の境界線が現地のどの地点を指すのか特定するための客観的な指標(標石や恒久的な地物等)が示されていない場合、主文不明確の違法がある。
問題の所在(論点)
境界確定判決において、境界線の表示が主文不明確の違法(民事訴訟法上の判決の不備)に当たらないために必要な特定の程度。
規範
境界確定の判決においては、確定される境界線が判決書(主文、理由、添付図面)上の記載から、現地のいずれの地点を指すものであるかが客観的に特定できなければならない。方位、角度、距離の記載があったとしても、その基点や経由地点が地物や標石等によって明確に特定されないままでは、主文不明確の違法を免れない。
重要事実
上告人と被上告人の所有する各山林の境界確定が争われた事案。第一審判決は、添付図面上の各地点を方位・角度・距離で結ぶ線を境界と認定し、原審もこれを維持した。しかし、図面上の基点(D4'点)や各経由地点(R4〜R9)が、実際の現地のどの地点に対応するのかを示す手掛かりが判決書上に存在しなかった。検証見取図では基点付近に柿の切株があるとされ、一部の点に仮処分の立札があるとされていたが、これらと境界点との位置関係は示されておらず、また立札は恒久的な地物とは認め難いものであった。
あてはめ
本件判決主文および図面は、境界線を方位や距離で表示しているが、その基点となるD4'点や各地点が現地の具体的な地点のどこを指すのかを判別する客観的指標を欠いている。柿の切株との距離も不明であり、仮処分の立札は境界確定の拠点となる恒久性営造物とはいえない。また、標石の埋設や地物による明確化の措置も講じられていない。したがって、図面上の測線と境界線の区別も曖昧であり、判決全体として境界線が不定不明確であるといえる。
結論
本件境界線の判示は判決書上不定不明確であり、主文不明確の違法があるため、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
境界確定訴訟や所有権に基づく土地明渡請求等において、判決の執行力を確保するために必要な「特定」の程度を画する判例である。図面上の座標や数値だけでなく、現地の地物(標石、擁壁、巨木等)との位置関係を判決書に明示させる実務上の要請を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和36(オ)26 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事訴訟の判決主文における土地の表示は、添付図面上の地形、地物、方位、距離、および理由中の説示を総合して現地を具体的に特定できる限り、明確性の要件を満たす。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決が是認した主文において、係争地の範囲が不明確であると主張して上告した。問題となった土地の特定について、…
事件番号: 昭和35(オ)1041 / 裁判年月日: 昭和38年3月29日 / 結論: 棄却
原判決が山林境界の基点として判示する山頂の檜立木根元とは、該立木の根元の中心点をいうものと解するのが相当であり、主文不明確の違法は生じない。