判旨
境界確定の訴えにおいて、裁判所は当事者の主張する境界線のみに拘束されず、占有状態や従来の経過事情その他諸般の証拠資料に基づき、客観的な境界を確定すべきである。
問題の所在(論点)
境界確定の訴えにおいて、裁判所は当事者の主張する具体的な境界線の表示に拘束されるか。また、占有状態以外の事実を考慮して境界を判定することは許されるか。
規範
境界確定の訴えは、公法上の境界を確定する形成の訴えであり、処分権主義の適用が制限される。裁判所は、当事者が主張する特定の境界線のみに拘束されることなく、土地の占有状態、従来の経緯、その他諸般の証拠資料から認められる客観的事実に基づき、適正な境界を画定すべきである。
重要事実
被上告人(一審原告)は、隣接する二地の境界につき、自己の所有建物の東南角及び東北角の各土台から東方に一尺離れた地点を結んだ直線であると主張した。これに対し、上告人(一審被告)は、被上告人の賃借権が期間満了により消滅しており、当該宅地を不法に占有していると主張して、境界の主張内容の不明確さや認定手法の違法を訴えた。原審は、占有状態だけでなく、従来の経過事情等を含めた諸般の証拠により境界を確定した。
あてはめ
本件では、被上告人の主張する境界線は建物土台を基準とした明確なものであり、判示事項に不明確な点はない。また、原審は単に現在の占有状態のみを根拠としたのではなく、土地に関する従来の経過事情や証拠資料を総合的に評価して境界を判定している。さらに、賃貸借関係が存続しているとの事実認定に基づき、不法占有との主張を排斥した原審の判断に審理不尽や理由不備の違法は認められない。
結論
原審が諸般の事情を総合して境界を確定した判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(オ)490 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
境界確定の訴における請求は、不明な境界を確定することを求める点にあり、いずれの線が本来の境界であるかに関する当事者の主張は、ただ事実上の申述の一部にすぎない。
境界確定の訴えにおける「裁判所の職権探知的性質」を裏付ける判例として位置づけられる。答案上では、当事者の主張するラインが不明確であっても裁判所が釈明権を行使して特定すべきことや、処分権主義の例外として当事者の主張に拘束されず独自の境界を定めてよい根拠として引用できる。
事件番号: 昭和37(オ)453 / 裁判年月日: 昭和39年9月18日 / 結論: 棄却
係争地に境界を画する自然の地勢地物が全く存せず、その境界を客観的に知ることができない場合においては、裁判所は、審理に現れたすべての事情を考慮して妥当とする境界を確定しても違法ではない。
事件番号: 昭和33(オ)376 / 裁判年月日: 昭和35年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約書に記載された地番や地積が実際の対象物件と相違している場合であっても、当事者間の合意の対象が別の土地であると客観的に認められるときは、証拠に基づき契約対象を真実の物件へと確定することができる。 第1 事案の概要:被上告人らは、所有するa番山林(6反6畝20歩)を、a番の1とa番の2に分筆し…