判旨
裁判所が証拠に基づき、登記簿や公図の記載とは異なる事実関係を認定したとしても、それは適法な事実認定の範囲内であり、財産権の侵害等の違憲の問題は生じない。
問題の所在(論点)
裁判所が登記簿や公図といった公の資料に反する事実を証拠に基づき認定することは、適法な事実認定の範囲内か、あるいは財産権の不当な侵害として違法または違憲となるか。
規範
裁判所は、自由心証主義に基づき、挙示された証拠を総合的に評価して事実を認定する裁量を有する。登記簿(公簿)や公図は権利関係を公示する重要な資料ではあるが、実体的な真実を法的に拘束する絶対的なものではなく、証拠によりこれらと異なる事実関係を確定することは適法である。
重要事実
上告人は、原判決が証拠に基づいて認定した事実関係が、登記を経た公簿や公図の記載内容と異なっていることを不服として上告した。上告人は、このような事実認定は法律によらず財産を侵奪する結果を招くものであり、憲法に違反する違憲なものであると主張した。
あてはめ
原審は、挙示された各証拠を検討した結果、公簿や公図の記載とは異なる実態があると判断して事実を認定した。これは裁判所の合理的な裁量に属する証拠の取捨選択および事実認定の結果である。登記や公図と異なる事実を認定したからといって、直ちに法律によらない財産の侵奪や違憲の事態を招くものではなく、適正な手続に基づく事実認定といえる。
結論
登記簿や公図と異なる事実を認定した原判決に違法はなく、上告人の違憲主張は前提を欠くため、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定の基本原則(自由心証主義)を確認するものである。不動産の境界や権利帰属が争われる場面において、登記や公図は強力な証拠資料となるが、それらが真実と異なることを示す証拠がある場合には、裁判所は実体真実に基づいた判断が可能であることを示している。実務上は、登記の推定力を覆すに足りる証拠の有無が焦点となる。
事件番号: 昭和32(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役場備付の公簿上の図面等であっても、他の証拠に照らしてその記載が真実と認め難い場合には、裁判所はこれを証拠として採用しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は、役場に備え付けられていた公簿上の図面等の記載を根拠として、原審の事実認定に経験則違反があると主張した。しかし、原審は当該図面の記載を…