「地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則」が憲法三二条、七六条、七七条に違反するとの主張は、いずれもその前提を欠き、上告適法の理由にあたらない。
「地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則」を違憲とする論旨が排斥された事例
地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則,憲法32条,憲法76条,憲法77条,裁判所法26条
判旨
賃借権の譲渡が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、民法612条2項による解除は認められない。また、判事補の参与制度は二人合議制を採用するものではなく、裁判の公平性や憲法上の裁判を受ける権利を侵害しない。
問題の所在(論点)
1. 賃借権の無断譲渡において、解除権の発生を否定すべき「背信行為と認めるに足りない特段の事情」が認められるか。 2. 賃貸借契約の更新拒絶に「正当事由」が認められるか。 3. 判事補の参与制度は、二人合議制を禁ずる裁判所構成の原則や憲法32条、76条、77条に違反するか。
規範
賃借権の譲渡・転貸が民法612条2項の解除事由となるのは、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りる事情がある場合に限られる。譲渡等の事実があっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない「特段の事情」があるときは、解除権の行使は否定される。また、土地賃貸借の更新拒絶には、借地借家法(旧借地法)上の「正当事由」を要する。
重要事実
亡Dは、被上告人Bに対し、土地の賃借権を譲渡した。これに対し、賃貸人の承継人である上告人は、無断譲渡(民法612条2項)に基づく解除、および賃貸借期間満了に伴う更新拒絶(正当事由の主張)をもって土地の明け渡しを求めた。また、審理手続において判事補が参与したことに対し、上告人は二人合議制を禁ずる憲法等に違反すると主張した。
事件番号: 昭和32(オ)411 / 裁判年月日: 昭和33年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が無断で賃借権を譲渡した場合であっても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項による解除権を行使できない。 第1 事案の概要:賃借人(被上告人)が賃貸人の承諾を得ることなく賃借権を第三者に譲渡した。これに対し、賃貸人は民法612条2項に…
あてはめ
1. 賃借権譲渡について:原審が確定した事実関係によれば、DからBへの譲渡は、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない「特段の事情」があると認められる。したがって、無断譲渡を理由とする解除は認められない。 2. 更新拒絶について:上告人の先代Eによる更新拒絶には、正当な理由があるとは認められない。 3. 参与規則について:同規則は二人合議制を採用したものではなく、判事補に意見を述べさせるのは養成の一方法にすぎない。ゆえに、偏頗・不公平な組織による裁判とはいえず、憲法各条項に違反しない。
結論
賃借権の譲渡に背信性が認められない特段の事情があり、かつ更新拒絶に正当事由がない以上、明け渡し請求は認められない。また、判事補の参与制度は合憲である。
実務上の射程
民法612条の信頼関係破壊の法理を確認する事例の一つ。答案上は、無断譲渡の事実を確認した上で、譲渡に至る経緯や人的関係を「特段の事情」の存否の検討において活用する。また、裁判所法関連の論点として、単独制事件における判事補の関与の限界(二人合議制の禁止)を論ずる際の論拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…
事件番号: 昭和42(オ)1362 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
賃借人たる甲女が同居の夫乙男に借地の一部を無断転貸した行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があつて、右無断転貸を理由とする解除が効力を生じないとされた場合において、もし甲乙間の生活関係に離婚等の変動を生じ、これにより前記特段の事情が解消されたときは、また、その時点において別途判断すれば足り、一般にこ…
事件番号: 昭和43(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
夫は宅地を賃貸し妻はその地上に建物を所有して同居生活をしていた夫婦の離婚に伴い、夫が妻へ借地権を譲渡した場合において、賃貸人は右同居生活および妻の建物所有を知つて夫に宅地を賃貸したものである等の判示事情があるときは、借地権の譲渡につき賃貸人の承諾がなくても、賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるというべ…