土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それが賃料不払等による法定解除権の行使が許されるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は右合意解除の効果を転借人に対抗することができない。
無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位
民法545条1項,民法612条
判旨
賃貸借の無断転貸が背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合、賃貸人は賃借人との合意解除の効果を転借人に対抗できず、土地明渡請求は認められない。
問題の所在(論点)
賃貸人の承諾のない転貸借において、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合、賃貸人は賃借人との合意解除をもって転借人に対抗し、土地明渡を請求できるか。民法612条2項および合意解除の対抗力の有無が問題となる。
規範
賃貸人が賃借人と賃貸借を合意解除しても、賃借人の債務不履行により法定解除権を行使できる等の事情がない限り、原則として転借人にその効果を対抗できない。この理は、無断転貸であっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法612条2項により解除できない場合においても、承諾ある転貸借と同様に適用される。
重要事実
賃貸人Dは賃借人A4に土地を貸したが、A4はDの承諾なくA1に転貸した。その後、DとA4は賃貸借契約を合意解除した。Dの相続人である被上告人らは、A1に対し、所有権に基づき土地明渡を請求した。これに対し、A1らは、転貸について背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため、合意解除の効果は対抗できないと主張した。
事件番号: 昭和41(オ)1073 / 裁判年月日: 昭和42年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物の転貸をした場合であっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項に基づく解除権を行使できない。 第1 事案の概要:賃借人Bは、賃貸人である上告人Aの承諾を得ることなく、本件土地の一部を訴外Dに転貸した。この転…
あてはめ
転借人は、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、賃貸人の承諾を得た転借人と同様、転借権をもって賃貸人に対抗し得る地位にある。そうである以上、合意解除との関係において承諾ある転貸借と区別すべき理由はない。本件でも、背信行為と認めるに足りない特段の事情が認められるならば、法定解除権が発生している等の例外的事情がない限り、Dらは合意解除をA1に対抗できないといえる。
結論
賃貸人は、特段の事情がある無断転貸借の転借人に対し、賃貸借の合意解除の効果を対抗できず、明渡請求は認められない。
実務上の射程
無断転貸であっても「背信性否定の特段の事情」が認められる場合は、承諾ある転貸借(民法398条等の類推)と同様の保護を転借人に与えるべきという射程を示す。答案上は、まず無断転貸の有効性(背信性)を論じ、その後に合意解除の対抗力を否定する論理で用いる。
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
事件番号: 昭和39(オ)697 / 裁判年月日: 昭和40年5月21日 / 結論: 棄却
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除が権利の濫用として許されない場合には、特段の事情がない限り、転借人に対し土地所有権に基づく土地明渡請求は許されない。
事件番号: 昭和42(オ)785 / 裁判年月日: 昭和42年12月8日 / 結論: 棄却
賃貸借の目的たる土地が四四・七坪である場合に、うち二三・七坪が無断転貸された場合は、特段の事情がない限り、右転貸は背信行為にあたるから、賃貸借の解除は有効である。
事件番号: 昭和42(オ)1369 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
賃借権の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない旨の特段の事情の存在については、賃借人において、主張・立証すべきである。