賃貸借の目的たる土地が四四・七坪である場合に、うち二三・七坪が無断転貸された場合は、特段の事情がない限り、右転貸は背信行為にあたるから、賃貸借の解除は有効である。
賃貸借の目的たる土地の一部が無断転貸された場合に賃貸借の解除が認められた事例
民法612条2項
判旨
賃借人が無断転貸等を行った場合でも、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは賃貸人は解除権を行使できないが、その主張立証責任は賃借人側にある。
問題の所在(論点)
無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除(民法612条2項)において、いわゆる「背信行為論」が適用されるための「特段の事情」の主張立証責任はどちらの当事者が負うか。
規範
賃借人が賃貸人の承諾なく賃借地を転貸した場合であっても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項による解除権を行使できない。ただし、この特段の事情の存在については、解除を拒もうとする賃借人側において主張・立証すべきである。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(E・F)に対し、土地(44.7坪)を貸し付けていた。その後、賃借権の譲受人とされるDが、賃貸人の承諾を得ることなく、土地の過半を占める部分(23.7坪)を上告人A1に転貸し、建物と共に売り渡した。また、残りの土地についても上告人A2に無断で譲渡された。これに対し、賃貸人は無断転貸等を理由に賃貸借契約を解除し、土地の明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和41(オ)1285 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡がされた場合、それが賃貸人に対する賃借人の背信行為となるのは、賃貸人が譲受人の賃料の支払能力、態度に不安を感じる場合にかぎられない。
あてはめ
本件では、賃借地全体の約半分を超える面積が無断で転貸されている事実に照らせば、当該転貸は原則として賃貸人に対する背信行為と認めるに足りるものである。賃借人側が、本件において解除を免れるために必要な「背信行為と認めるに足りない特段の事情」を具体的に主張・立証していない以上、解除は有効と解される。また、裁判所がこの特段の事情について釈明権を行使しなかったとしても違法ではない。
結論
賃借人において「特段の事情」を主張立証しない限り、無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除は有効である。したがって、本件解除は認められる。
実務上の射程
信頼関係破壊の法理(背信行為論)における主張立証責任を明示した点に実務上の意義がある。答案上は、民法612条2項の要件充足を確認した後、賃借人側の反論として「背信行為と認めるに足りない特段の事情」を検討する際の構成として用いる。面積比率や譲渡・転貸の経緯が主要な評価要素となる。
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
事件番号: 昭和42(オ)1369 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
賃借権の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない旨の特段の事情の存在については、賃借人において、主張・立証すべきである。