当事者の提出した書証、援用した証言ならびに本人尋問の結果の記載を逸脱したことが記載上明らかに認められる場合には、民訴法第一九四条にいう「明白ナル誤謬アルトキ」として更正決定することができる。
判決の更正決定が許されるとされた事例
民訴法194条
判旨
判決書に事実の記載が欠落する等の明白な誤りがある場合であっても、それが更正決定によって適法に更正されたのであれば、当該判決に違法はない。
問題の所在(論点)
判決書において、当事者が提出した証拠や援用した証言の記載が漏れていた場合、その誤りが更正決定によって修正された後であっても、なお当該判決に違法があるといえるか。民事訴訟法上の判決の更正(現行民訴法257条1項)の効力が問題となる。
規範
判決に計算違い、書き損じその他これに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は更正決定によりこれを修正することができる。更正決定がなされた場合には、判決の内容は当初から修正された状態で存在していたものとみなされ、当該記載の誤り(欠落を含む)を理由とする違法事由は解消される。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)において証拠(乙第21号証)を提出し、証人の証言および被上告人本人尋問の結果を援用した。しかし、原判決の事実の記載において、これらの事実が欠落していた。その後、原審は更正決定を行い、当該記載の誤りを修正した。
事件番号: 昭和42(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和43年2月23日 / 結論: 棄却
原告が明渡を求める目的物件の表示を誤つて申し立てたため、裁判所が判決において目的物件の表示を誤つた場合において、右目的物件がもともと同一であることが記録上明らかであるときは、民訴法第一九四条を準用して、判決の更正をすることができると解するのが相当である。
あてはめ
本件では、判決書に証拠提出等の事実の記載が漏れていたが、これは「明白な誤謬」に該当する。原審はこの誤りについて適法に更正決定を行っている。更正決定によって事実関係の記載が正された以上、もはや判決に事実の記載を逸脱した不備があるとは認められない。したがって、上告人が主張するような判決の違法は存在しないと解される。
結論
更正決定により明白な誤謬が修正された以上、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の「事実」欄の記載漏れなど、記録に照らして客観的に明らかな誤りについては、更正決定の対象となる。答案上、判決の形式的瑕疵を論じる際には、更正決定による治癒の可能性や、更正後の判決を基準に違法の有無を判断すべきことを示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)242 / 裁判年月日: 昭和33年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したというためには、当事者が適切に主張および立証を尽くしていることが必要であり、記録上それらが認められない場合には違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決において判断の遺脱があるとして上告を提起した。具体的にどのような抗弁がなされたの…
事件番号: 昭和30(オ)303 / 裁判年月日: 昭和31年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書における訴訟代理人の氏名の記載は、必要的記載事項(民事訴訟法191条等)ではないため、その誤記や欠落が直ちに訴訟手続の無効をもたらすものではない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決における訴訟代理人の表示に不備があることを理由に、原審における訴訟手続が訴訟代理権のない者によってなされたもの…