判旨
事実認定において一部に違法があったとしても、それが主要事実に影響を及ぼさず判決の結論を左右しない場合には、判決に影響を及ぼすべき違法とはいえない。
問題の所在(論点)
原審が認定した事実のうち、主要事実に付加されたに過ぎない細部的事実の認定に誤りがある場合、または「あらずもがな」の補足的説明に誤りがある場合に、それが民事訴訟法上の上告理由(判決に影響を及ぼすべき違法)に該当するか。
規範
上告理由としての「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」が認められるためには、当該違法が判決の主文(結論)を導く基礎となる主要事実に不可欠な影響を与えていることを要する。主要事実に付随する事実や、結論に影響しない「あらずもがなの蛇足的説明」に誤りがあっても、判決主文に影響を及ぼすべき違法とは認められない。
重要事実
上告人は、原審の事実認定に証拠に基づかない誤りがあると主張して上告した。具体的には、上告人が判示移築のために宅地を訴外Dに賃貸するよう被上告人に交渉したという事実の認定に誤りがあると指摘した。また、原判決の判文中の特定の記述についても違法を主張した。
あてはめ
原判決が認定した事実のうち、上告人が賃貸交渉を行ったという事実は主要事実に付随的に付加されたものに過ぎない。たとえこの点に認定上の誤りがあったとしても、結論を支える主要事実の認定が直ちに否定されるわけではない。また、論旨が指摘する記述は前後の趣旨から見て蛇足的な説明に止まり、原判決が無用の措辞を弄したものといえる。したがって、いずれも判決主文に影響を及ぼす程の違法とはいえない。
結論
本件事実認定の誤り等は、判決主文に影響を及ぼすべき違法とは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における「理由不備」や「事実誤認」を主張する際、その事実が結論(主文)を導くために不可欠な要素(主要事実)か、それとも単なる付随的事実や傍論的説明に過ぎないかを区別する基準として機能する。答案上は、認定の誤りを指摘するだけでなく、それが結論を左右する性質のものであることを論証する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和28(オ)377 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、原審が認定していない事実を前提とする主張や、適法に行われた事実認定を非難するに過ぎないものであり、民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の判断に対して上告を提起したが、その上告理由は原審が認定していない事実を前提とするもの(第…