判旨
判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したというためには、当事者が適切に主張および立証を尽くしていることが必要であり、記録上それらが認められない場合には違法とはならない。
問題の所在(論点)
当事者が主張したとされる抗弁について、判決において判断が示されなかった場合に、直ちに判断の遺脱という違法が認められるか。
規範
民事訴訟法上の「判断の遺脱」の存否は、当事者が有効に抗弁を提出し、かつそれに対する立証を尽くしたという事跡が記録上顕われているか否かによって判断される。
重要事実
上告人は、原判決において判断の遺脱があるとして上告を提起した。具体的にどのような抗弁がなされたのか、および事件の背景となる基礎事実は本判決文からは不明である。
あてはめ
本件記録を精査しても、上告人が主張するような抗弁を実際に提出し、さらにそれについて立証を試みたという事跡が認められない。したがって、裁判所が当該事項について判断を示さなかったとしても、判断を遺脱したという過程に瑕疵は存在しないと解される。
結論
原判決に判断の遺脱という違法はなく、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判所が判断すべき対象は、当事者が適法に提出した主張・証拠の範囲に限られる。答案上、理由不備や判断遺脱を論じる際は、単に主張の存在を指摘するだけでなく、それが有効な攻撃防御方法として記録上に顕出されている必要があることを示す際に参照しうる。
事件番号: 昭和34(オ)580 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】控訴状の「事件の関係欄」に記載された事実上の主張が口頭弁論で陳述され、かつ撤回・訂正されていない場合には、裁判所は当該主張について判断を下す義務があり、これを主張がないものとして排斥することは判断遺脱の違法にあたる。 第1 事案の概要:上告人(控訴人)は、被上告人(被控訴人)からの賃料請求に対し、…