判旨
口頭弁論における裁判所の釈明や当事者の主張は、当事者が予想し得ない事項によって不意打ちを受けることを避けるという趣旨に照らし、既に当事者が自ら主張し争点としている事項に関連するものであれば、手続法上の違法とはならない。
問題の所在(論点)
当事者の一方が欠席した口頭弁論期日において、裁判長の発問に応じてなされた相手方の主張が、欠席した当事者にとって「予想し得ない事項」による不意打ちとして、民事訴訟法上の違法(釈明権の逸脱等)を構成するか。
規範
民事訴訟法における口頭弁論の運営および釈明権の行使等は、当事者の予想し得ない事項があらわれ、これによって不意打ち的な裁判がなされることを避けるという趣旨に出たものと解すべきである。したがって、当事者が自ら主張し、または予見可能な範囲内の事項について審理を進めることは、不意打ちにあたらず適法である。
重要事実
上告人(賃借人)は、本件建物の統制賃料額が月800円以下であるから賃料請求等は認められないと控訴状で主張していた。原審の第2回口頭弁論期日に上告人が不出頭の際、被上告人(賃貸人)は裁判長の発問に対し、統制賃料額は月2,905円から3,500円程度である旨を主張した。上告人は、この手続が予想し得ない事項に基づくものであり違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人は自ら控訴状にて「本件統制額が月800円以下である」との主張を提出しており、これは第1回口頭弁論期日に陳述擬制されていた。第2回期日における被上告人の主張は、この上告人の主張に対して裁判長の発問に応じる形でなされたものである。統制賃料の具体的金額は上告人自身が争点として提示した事項に関連しており、上告人にとって予想し得ない主張とは認められない。また、計算方法の誤りについても、正当な計算によれば約定賃料を上回るため、判決に影響を及ぼすものではない。
結論
本件の手続に違法はなく、上告を棄却する。当事者が自ら争点化した事項に関する相手方の主張や裁判所の審理は、不意打ちには当たらない。
実務上の射程
釈明権の限界や不意打ち防止の法理に関する基本判例である。答案上は、裁判所が当事者の主張していない事実を基礎としたり、予想外の法的観点から判断したりする場合の「手続的保障」の議論において、本判決の「予想し得ない事項による不意打ちの防止」という趣旨を引用して規範を定立する。
事件番号: 昭和29(オ)263 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の申し立てない事項について判決したという事由は認められず、処分権主義に反する違法はない。また、特例法上の上告理由にも該当しないため、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人は、原判決において当事者が申し立てていない事項について判決がなされたという違法がある旨を主張して上告を提起し…