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一時使用のための借家権と認定された事例
判旨
本人訴訟において当事者が攻撃防御を尽くしている場合には、裁判所が特定の準備書面の陳述や証拠申出を求めなかったとしても、釈明権の不行使等の違法は認められない。また、一時使用目的の賃貸借においては地代家賃統制令の適用は排除される。
問題の所在(論点)
本人訴訟において、裁判所が当事者に対し特定の書面の陳述や証拠申出を促す釈明を行うべき義務を負うか。また、一時使用目的の賃貸借において価格統制法令が適用されるか。
規範
裁判所が釈明権(民事訴訟法149条参照)を行使すべきか否かは、訴訟の進行状況や当事者の攻撃防御の尽くし方を総合的に考慮して判断される。当事者が本人訴訟であっても、既に自ら十分な攻撃防御を行っている場合には、裁判所が更なる釈明を行う義務はない。また、一時使用目的の賃貸借であることが認められる場合には、当時の統制法令(地代家賃統制令等)の適用は受けない。
重要事実
上告人(賃借人)は、本人訴訟として原審の第1回から第5回の弁論期日に出頭し、第1審の口頭弁論の結果を陳述したほか、証拠調べを行い、攻撃防御の方法を尽くしていた。しかし、原審が特定の準備書面の陳述や証拠の申出を求める釈明をしなかったことが審理不尽および釈明権不行使にあたるとして上告。また、本件賃貸借が一時使用目的であると認定されたことに伴い、地代家賃統制令が適用されなかった点についても争われた。
あてはめ
上告人は、5回にわたる弁論期日に出頭して自ら訴訟を遂行し、攻撃防御を尽くしている。このような訴訟経過に鑑みれば、本人訴訟であることを考慮しても、裁判所がそれ以上の釈明を行う必要があったとはいえず、釈明権不行使の違法はない。また、事実認定として本件賃貸借が一時使用目的であると認められる以上、地代家賃統制令23条2項1号に基づき、同令の適用は排斥されるのが適法である。
結論
本件における原審の判断に釈明権不行使の違法はなく、また一時使用目的の賃貸借に地代家賃統制令を適用しなかったことも正当であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
釈明権の限界に関する判断枠組みを示している。本人訴訟であっても、形式的に釈明を要するのではなく、実質的に攻撃防御が尽くされているかという「訴訟の経過」が重視される。司法試験の答案上は、釈明権の行使が義務付けられるべき場面(主張の矛盾や不明瞭さがある場合)との対比で、本件のように尽くされている場合には義務が生じないことを説明する際に有用である。
事件番号: 昭和35(オ)1149 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
正当事由に基づく家屋受渡請求事件において、被告(賃借人)先代が賃料につき提供も供託もしていないことをもつて、他人の家屋を使用する者として信義に反する旨の主張が原告(賃貸人)によつてなされ、被告が右事実を認めたが、右賃料についてはその後被告はこれを供託した旨陳述し、これに対し原告がその点を争わないと述べているときは、原告…