被控訴人が控訴棄却の申立をしていないのに、控訴審判決が控訴棄却の申立のある旨を記載するのは違法であるが、このような違法は二審判決に影響を及ぼすものではない。
控訴棄却の申立のないのにその旨を二審判決に記載した違法とその効果。
民訴法362条,民訴法391条,民訴法394条
判旨
控訴棄却の申立てがない場合でも裁判所は控訴棄却の判決ができ、また、当事者が主張しない占有権原について裁判所が改めて釈明すべき義務はない。
問題の所在(論点)
1. 被控訴人による控訴棄却の申立てを欠く場合に、裁判所が控訴棄却の判決をすることの可否。2. 依拠していた占有権原の前提事実(所有権)が否定された場合に、裁判所が他の占有権原について釈明すべき義務(釈明義務)を負うか。
規範
1. 控訴審において、被控訴人から控訴棄却の判決を求める申立てがない場合であっても、裁判所は控訴に理由がないと認めるときは控訴棄却の裁判をなしうる。2. 当事者が特定の事実に依拠した占有権原のみを主張している場合、前提となる権利関係(所有権の帰属等)が否定されたからといって、裁判所が直ちに他の占有権原の有無について釈明すべき義務を負うものではない。
重要事実
上告人らは、本件家屋の占有権原として「上告人A2が所有者であり、同人から使用を許諾された」旨のみを主張していた。しかし、原審は本件家屋の所有者を被上告人と認定したため、上告人らの占有権原を否定した。また、原審の口頭弁論期日において被上告人側から「控訴棄却」の申立てがなされていなかったが、原判決は事実摘示において申立てがあった旨を記載し、控訴を棄却した。上告人らは、控訴棄却の申立てがないのに棄却した点、および占有権原について釈明権を行使しなかった点に違法があると主張して上告した。
あてはめ
1. 控訴の申立てがなされている以上、裁判所はその当否を判断する権限を有しており、当事者の申立ての有無にかかわらず理由がないと判断すれば棄却しうる。事実に反する申立ての記載は不適切だが、結論には影響しない。2. 上告人らはA2を所有者とする権原のみを主張しており、裁判所が証拠に基づき所有権を被上告人と認めた以上、主張された範囲での権原否定は当然である。当事者が主張していない別個の権原についてまで、裁判所が自ら示唆し釈明を求める必要はない。
結論
本件控訴棄却の判決および釈明権の不行使に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
弁論主義の原則に基づき、当事者が特定の法的根拠(本件では特定の人物を所有者とする使用許諾)に固執している場合、その前提が崩れたからといって裁判所に新たな攻撃防御方法を模索させる釈明義務は生じない。答案上は、釈明権の限界(不意打ち防止の範囲内か、新たな主張の示唆になるか)を論じる際の消極例として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)263 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の申し立てない事項について判決したという事由は認められず、処分権主義に反する違法はない。また、特例法上の上告理由にも該当しないため、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人は、原判決において当事者が申し立てていない事項について判決がなされたという違法がある旨を主張して上告を提起し…