判旨
当事者が一度証拠調べの申請をした後にこれを自ら撤回した場合、裁判所が当該証拠の採用決定を取り消し、証拠調べを行わないことは適法である。
問題の所在(論点)
当事者が一度申請した証拠を自ら放棄した場合に、裁判所がその証拠調べを行わないことは、証拠提出権を不当に制限する違法な措置に当たるか。
規範
当事者が一度提出した証拠方法を自ら放棄(撤回)した場合、裁判所が既になされた証拠決定を取り消し、その取調べを行わない措置は、民事訴訟法上の証拠調べに関する裁量の範囲内であり、不法な証拠制限には当たらない。
重要事実
上告人は原審において証人Dの取調べを申請したが、その後、自ら当該証拠方法を放棄した。これを受けて原審は、証人Dの採用決定を取り消し、その取調べを行わなかった。上告人は、原審が不当に証拠調べを行わず、証拠提出を制限したことは違法・違憲であるとして上告した。
あてはめ
記録によれば、上告人は原審にて証人取調べの申請後に自ら当該証拠方法を放棄している。裁判所が証拠決定を取り消し、取調べを実施しなかったのは当事者の意思に基づくものであり、裁判所が故なく証拠提出を制限した事実は認められない。したがって、適正な手続に反する不法な措置とはいえない。
結論
原審の措置に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠調べの開始前であれば、当事者は申請した証拠を自由に撤回できるという実務上の原則を確認するものである。答案上は、裁判所の証拠採用の合理性や、釈明権の行使との関連で、当事者の証拠放棄の有無を確認する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和35(オ)419 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
証拠調の申請につきその許否を決することなくして結審したのは、訴訟の指揮およびその経過に徴すれば、その取調の要がないとしてこれを排斥した趣旨と解することを相当とする。