本人尋問が唯一の証拠方法であつても、証拠の申出をした者が証拠申請書を提出せずかつその提出の催告にも応じなかつたために呼出ができなかつたような場合には、その取調をしないで審理を終結しても違法とはいえない。
唯一の証拠方法を取り調べなくても違法でないとされた事例。
民訴法259条
判旨
当事者が証拠申請書提出の催告に応じないため証拠の取調べが不可能となった場合には、たとえそれが唯一の証拠であっても、取調べをせずに弁論を終結することは適法である。
問題の所在(論点)
当事者の不協力により証拠調べが実施できない場合、当該証拠が事実認定に不可欠な「唯一の証拠」であっても、取調べを行わずに結審することは許されるか。
規範
裁判所が証拠調べの決定をした場合であっても、当事者が証拠申請書の提出等の必要な協力を怠り、または呼出しに応じない等の事由により実施が不可能となったときは、その証拠が争点に対する唯一の証拠である場合であっても、裁判所は職権で当該証拠調べの決定を取り消し、審理を終結することができる。
重要事実
控訴審において、裁判所は控訴代理人の申し出により控訴人本人の尋問を決定した。その後、裁判所は控訴代理人に対し、証拠申請書を提出するよう催告したが、代理人はこれに応じなかった。さらに、尋問実施のために指定された期日に控訴人本人が出頭しなかったため、裁判所は尋問決定を取り消して口頭弁論を終結し、判決を言い渡した。これに対し控訴人側が、唯一の証拠を調べなかった違法があるとして上告した事案である。
あてはめ
本件では、裁判所が証拠申請書の提出を催告したにもかかわらず、上告人側はこれを放置しており、証人(本人)の呼出しに必要な手続を懈怠している。また、指定された尋問期日において本人が不出頭であったという事実は、上告人自ら証拠調べの機会を放棄したものと評価できる。このような状況下では、裁判所が適正かつ迅速な裁判を実現するために審理を完結させることは合理的であり、唯一の証拠であることを理由に手続を停滞させる必要はないと解される。
結論
本件尋問の取消しおよび弁論の終結に違法はない。上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟法上、不必要な証拠の取調べをしない自由(民訴法181条1項参照)があるが、本判決は、当事者が協力義務を怠る場合に「唯一の証拠」であっても取調べを要しないことを明確にした。答案上では、適時提出主義や訴訟遅延の防止の観点から、当事者の手続懈怠を理由とする証拠決定の取消しの適法性を肯定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)284 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者本人尋問の申出であっても、他に証拠資料(乙号証等)が提出されている場合には、民事訴訟法上の「唯一の証拠」には該当せず、その採用の成否は裁判所の裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は原審において本人尋問の申出を行った。しかし、当該事案においては、既に乙二号証という書証が提出され、証拠資…
事件番号: 昭和30(オ)136 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が唯一の証拠として申請した本人尋問について、期日に正当な理由なく欠席し、その際代理人が他に立証はない旨を述べた場合には、証拠申請を放棄したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は原審において抗弁事実を立証するため、唯一の証拠として上告人本人の尋問を申請した。裁判所はこれを許容し証拠調べ…