判旨
当事者本人尋問の申出であっても、他に証拠資料(乙号証等)が提出されている場合には、民事訴訟法上の「唯一の証拠」には該当せず、その採用の成否は裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
当事者が本人尋問を申し出た際、他に書証(乙号証)が提出されている場合であっても、当該本人尋問の申出は「唯一の証拠」として、裁判所は必ずこれを取り調べなければならないか。
規範
裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは取り調べることを要しないが、それが事実を証明するための「唯一の証拠」である場合には、原則としてこれを取り調べなければならない。ただし、書証等の他の証拠資料が既に提出されている場合には、当該証拠申出は唯一の証拠とは認められない。
重要事実
上告人は原審において本人尋問の申出を行った。しかし、当該事案においては、既に乙二号証という書証が提出され、証拠資料として存在していた。
あてはめ
本件では、乙二号証が証拠として提出されている。この事実からすれば、上告人が申し出た本人尋問は、立証しようとする事実に対する唯一の証拠方法とは認められない。したがって、原審が本人尋問を行わなかったとしても、唯一の証拠を却下したという訴訟法違背の不法は存在しない。
結論
他に証拠資料が存在する以上、本人尋問の申出は唯一の証拠には当たらず、これを取り調べなかった原審の判断に違法はない。
実務上の射程
証拠決定の裁量(民訴法181条1項)と、その例外としての唯一の証拠の法理に関する判例である。実務上、他に書証や証言が存在する状況では、特定の証拠申出が却下されても「唯一の証拠の不当却下」を理由とした上告等は極めて困難であることを示唆している。
事件番号: 昭和30(オ)249 / 裁判年月日: 昭和32年2月8日 / 結論: 棄却
当事者本人に対する臨床訊問が途中で打ち切られ、結局、反対訊問の機会がなかつたとしても、それが、右本人の病状に照らし、やむを得ない事由によるものと認められる以上、右本人訊問の結果は、これを証拠資料としても違法ではない。