判旨
当事者が唯一の証拠として申請した本人尋問について、期日に正当な理由なく欠席し、その際代理人が他に立証はない旨を述べた場合には、証拠申請を放棄したものとみなされる。
問題の所在(論点)
当事者が申請した唯一の証拠について、当該当事者が証拠調べ期日に欠席した場合に、これを実施せずに結審することが「唯一の証拠」を無視した違法な訴訟手続(民事訴訟法違反)にあたるか。
規範
裁判所が一度採用を決定した証拠であっても、証拠調べ期日に当該証拠(本人等)が無届で出頭せず、かつ代理人が他に立証事項がない旨を明示した場合には、特段の事情がない限り、当該証拠申請を放棄したものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は原審において抗弁事実を立証するため、唯一の証拠として上告人本人の尋問を申請した。裁判所はこれを許容し証拠調べ期日を指定したが、上告人本人は無届のまま出頭しなかった。これに対し、裁判所は上告人本人を尋問しない旨を告げて弁論を終結した。その際、上告人代理人は「他に主張立証はない」旨を述べていた。
あてはめ
本件において、上告人本人は裁判所が指定した尋問期日に無届で出頭しておらず、自ら証拠調べの機会を逸している。加えて、その場に立ち会った上告人代理人は、裁判所が尋問を実施しない旨を告げた際、異議を述べるどころか「他に主張立証はない」と明言している。このような代理人の言動は、客観的にみて当該証拠申請を維持する意思を放棄したものと評価できる。したがって、裁判所が尋問を実施せずに結審したとしても、証拠申出を不当に却下したことにはならない。
結論
上告人代理人は本人尋問の申請を放棄したものと認められるため、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(オ)205 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
「唯一の証拠」であっても、当事者の懈怠や代理人の訴訟追行の態様によっては、裁判所は証拠調べを省略できる。実務上、立証責任を負う側が証拠を提出・提示できないまま「他に立証なし」と述べることの重大な帰結(証拠申請の放棄)を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和30(オ)551 / 裁判年月日: 昭和30年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を…
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。