土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。
間接事実と経験則について判断を示した事例。
民訴法185条
判旨
裁判所は、当事者が申し立てた証拠について、必要がないと認める場合にはこれを取り調べないことができ、唯一の証拠であっても、立証しようとする事実が争点に関係しない等の事情があれば、却下の判断は適法である。
問題の所在(論点)
当事者が申し立てた唯一の証拠(本件では訴外Dの証人尋問)について、裁判所がこれを取り調べずに判決を下すことが、民事訴訟法上の証拠調べ義務に違反するか。
規範
裁判所は、当事者が申し立てた証拠であっても、必要がないと認める場合には、これを取り調べないことができる。また、唯一の証拠の申し出であっても、それが特定の争点に関する唯一の証拠を意味しない場合や、認定に不要であると合理的に判断される場合には、これを取り調べずに弁論を終結したとしても違法ではない。
重要事実
上告人は、被上告人らとの間に本件土地の賃貸借契約が成立したと主張し、訴外Dの証人尋問を申請した。しかし、原審は証拠調べをせずに、本件建物をバラック建物と認定した上で、本件土地の契約は賃貸借ではなく使用貸借であると判断した。上告人は、訴外Dが唯一の証人であるにもかかわらず尋問しなかったことは違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(オ)205 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
あてはめ
本件において、上告人は訴外Dを唯一の証人と主張するが、記録上、上告人と被上告人らの間の賃貸借成立に関する「唯一の証拠」ではないことが明白である。また、たとえ被上告人らと訴外Dとの間に賃貸借関係があったとしても、その事実が直ちに上告人と被上告人らの間の認定を左右するものではない。したがって、裁判所が当該証人を必要なしとして却下し、または明示の却下なく弁論を終結したとしても、証拠の取捨選択に関する裁判所の合理的な裁量の範囲内といえる。
結論
裁判所が特定の証拠を必要ないと判断して取り調べないことは適法であり、本件における証人尋問の見送りも違法ではない。
実務上の射程
民事訴訟法における「唯一の証拠」の取り扱いに関する基準を示す。実務上は、特定の争点(主要事実)を立証するための唯一の証拠である場合には取り調べ義務が生じる余地があるが、本件のように他の証拠が存在する場合や立証対象が周辺的事実に留まる場合には、裁判所の裁量が広く認められることを確認するものである。
事件番号: 昭和52(オ)591 / 裁判年月日: 昭和53年3月23日 / 結論: 破棄差戻
口頭弁論終結にあたつて当事者が他に主張立証はない旨述べたことは、唯一の証拠方法を取り調べることを要しない特段の事情にはあたらない。
事件番号: 昭和30(オ)136 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が唯一の証拠として申請した本人尋問について、期日に正当な理由なく欠席し、その際代理人が他に立証はない旨を述べた場合には、証拠申請を放棄したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は原審において抗弁事実を立証するため、唯一の証拠として上告人本人の尋問を申請した。裁判所はこれを許容し証拠調べ…
事件番号: 昭和45(オ)625 / 裁判年月日: 昭和45年12月4日 / 結論: 棄却
第一審において原告の請求が全部認容されたが、その控訴審において請求が減縮された場合において、原告の請求を相当とし、被告の控訴を理由がないと判断するときは、実質的に債務名義として有効に存続する部分を明確にするため、控訴判決の主文において、控訴を棄却したうえ、第一審判決を訂正し、減縮後の原告の請求自体につき認容する判決をす…