第一審において原告の請求が全部認容されたが、その控訴審において請求が減縮された場合において、原告の請求を相当とし、被告の控訴を理由がないと判断するときは、実質的に債務名義として有効に存続する部分を明確にするため、控訴判決の主文において、控訴を棄却したうえ、第一審判決を訂正し、減縮後の原告の請求自体につき認容する判決をすることができる。
控訴審において請求が減縮された場合と判決主文
民訴法182条,民訴法186条,民訴法237条,民訴法384条
判旨
控訴審での請求の減縮に対し、裁判所が第一審判決のうち有効な部分を主文で明確化することは実務上の便宜として適法であり、また唯一の証拠でない証拠申出を決定せずに結審しても、特段の事情がない限り違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 控訴審での請求減縮に対し、原審が単なる控訴棄却ではなく、主文で有効な範囲を特定したことが違法か。 2. 唯一の証拠ではない証拠申出に対し、採否を決定せずに結審することが民事訴訟法上許されるか。
規範
1. 控訴審で請求が減縮(訴の一部取下げ)された場合、被上告人の請求が相当であっても、第一審判決が債務名義となることを考慮し、実質的に有効な部分を主文で明確にすることは実務上の便宜として許容される。 2. 当事者が申し出た証拠が「唯一の証拠」でないときは、特段の事情のない限り、その採否を決定することなく結審しても違法ではない。
重要事実
第一審で請求が認容された後、控訴審において被上告人が請求を減縮(一部取下げ)し、上告人らがこれに同意した。原審は、減縮後の請求を維持する形で判決主文において債務名義として有効な範囲を明示した。また、上告人らは証人1名の尋問を申し立てたが、原審はこれを取り調べず、採否の決定もしないまま結審した。この証人は記録上「唯一の証拠」ではなかった。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。
あてはめ
1. 請求の減縮は上告人らの同意により効力を生じている。原審が主文で請求範囲を明示したのは、将来の強制執行における債務名義の範囲を明確にするという実務的便宜に基づくものであり、不利益変更禁止等の原則に反する違法はない。 2. 申し立てられた証人Dは、記録上唯一の証拠ではない。判例の法理に照らせば、特段の事情がない限り証拠採用の決定を待たずに結審しても手続違背にはあたらない。本件ではそのような特段の事情も認められない。
結論
1. 実務上の便宜を考慮した主文の構成に違法はない。 2. 唯一の証拠でない証拠の採否を決定せず結審したことに違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
証拠調べの必要性に関する判断基準を示す。特に「唯一の証拠」については必ず取り調べなければならないとする原則(民事訴訟法旧259条2項参照)の反面として、それ以外の証拠については裁判所の裁量を広く認める点に射程がある。実務上は、弁論終結時の手続的瑕疵を主張する際の反論として有用。
事件番号: 昭和45(オ)607 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 棄却
反証として取調べがなされた証人の証言が争点の判断に影響を及ぼさないものである場合には、判決の理由中において右証言の採否が明らかにされていなくても、右の瑕疵は、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背に当らない。
事件番号: 昭和30(オ)551 / 裁判年月日: 昭和30年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を…
事件番号: 昭和37(オ)205 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
事件番号: 昭和45(オ)1222 / 裁判年月日: 昭和46年7月1日 / 結論: 棄却
一、(省略) 二、裁判所が特定の申立についてするいわゆる立件は、裁判所の内部における事務処理上の手続にすぎないものであつて、それがその申立を審理した口頭弁論の終結後になされたときでも、その申立の訴訟法上の効力に影響を及ぼすものではない。