反証として取調べがなされた証人の証言が争点の判断に影響を及ぼさないものである場合には、判決の理由中において右証言の採否が明らかにされていなくても、右の瑕疵は、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背に当らない。
判決理由中において証人の証言の採否が明らかにされていない違法が判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背に当らないとされた事例
民訴法191条,民訴法394条
判旨
裁判所が判決の理由中で証拠の採否を明らかにしていなくても、その証拠の内容が争点の判断に影響を及ぼさないものであれば、判決に影響を及ぼすべき法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
証拠調べが行われた証拠について、判決の理由中でその採否を明示しなかった瑕疵が、上告理由となる「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」に該当するか。
規範
判決書には理由を付さなければならない(民事訴訟法253条1項2号)が、ある証拠の採否について理由中で明示的に触れていない瑕疵があったとしても、当該証拠の内容が争点(事実認定)の判断に影響を及ぼさないものである場合には、民事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」(同法312条1項)には該当しない。
重要事実
上告人は、原審において証人Dの尋問が行われたにもかかわらず、原判決の理由中でその証言の採否が明らかにされていない点を不服として上告した。事案の本質的争点は、被上告人B1とB2との間に共同経営契約が成立し、B2の資金援助によりB1が建物を建築所有したのか、あるいは借地権の譲渡があったのかという点であった。証人Dの証言内容は、本件建物の「建築依頼者の調査」に関するものであった。
事件番号: 昭和45(オ)625 / 裁判年月日: 昭和45年12月4日 / 結論: 棄却
第一審において原告の請求が全部認容されたが、その控訴審において請求が減縮された場合において、原告の請求を相当とし、被告の控訴を理由がないと判断するときは、実質的に債務名義として有効に存続する部分を明確にするため、控訴判決の主文において、控訴を棄却したうえ、第一審判決を訂正し、減縮後の原告の請求自体につき認容する判決をす…
あてはめ
証人Dの証言内容は建物の建築依頼者の調査に関するものに留まり、争点である「B1とB2間における建物の所有関係の帰属を定めるべき共同経営契約の内容」を直接左右するものではない。したがって、当該証言は本件の争点の判断に影響を及ぼさないものである。理由中で採否が示されていない点に形式的な瑕疵はあるものの、判断の結論を左右するものではないため、実質的な違法性は認められない。
結論
原判決の理由不備の瑕疵は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反には当たらない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
判決における理由不備(証拠の放置)が直ちに上告理由となるわけではなく、当該証拠の「重要性(争点との関連性)」を検討して、結論に影響しない程度のものであれば救済されないという実務上の判断基準を示している。
事件番号: 昭和52(オ)298 / 裁判年月日: 昭和53年7月17日 / 結論: 棄却
判決の事実摘示として証拠関係の記載を欠いたとしても、判決に影響を及ぼすべき違法があるとは認められない。
事件番号: 昭和42(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和43年9月24日 / 結論: 棄却
事実の認定の資料に供された証言をした証人に対し偽証の告訴手続がとられたというだけでは、適法な再審事由、したがつて適法な上告理由とはならない。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。
事件番号: 昭和38(オ)909 / 裁判年月日: 昭和39年6月25日 / 結論: 棄却
証言及び当事者本人尋問の結果の採否について具体的事由を説示することなく単にこれを措信し難いとした点に違法はない(昭和三〇年(オ)第八五一号、昭和三二年六月一一日第三小法廷判決、民集一一巻六号一〇三〇頁参照)。