証言及び当事者本人尋問の結果の採否について具体的事由を説示することなく単にこれを措信し難いとした点に違法はない(昭和三〇年(オ)第八五一号、昭和三二年六月一一日第三小法廷判決、民集一一巻六号一〇三〇頁参照)。
証言の採否と具体的事由判示の要否。
民訴法185条
判旨
裁判所が証拠の採否を判断する際、個々の証言を排斥する理由を具体的に判示する必要はなく、自由心証主義の範囲内として適法である。また、事実認定の判断は原審の専権に属し、理由不備等の違法がない限り上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
裁判所が証拠を排斥する際、判決書においてその具体的な理由を逐一説明する義務(理由付記義務)があるか。また、具体的な理由を示さずに証拠を退けることが、事実誤認や理由不備の違法を構成するか。
規範
証言の採否については、その理由を一々具体的に判示することを要しない。証拠の取捨選択および事実の認定は、特段の事情がない限り、原審の専権に属する。
重要事実
上告人は、原審において土地108坪の所有権を主張し、これに関連する証人D、Eの証言および代表者Fの尋問結果を提出した。しかし、原審はこれらの証拠を具体的事由の説示なく「措信し難い」として排斥し、所有権を認めなかった。また、原審は別個の828坪の土地に関する認定の中に、問題の108坪の土地が含まれると判断していた。これに対し、上告人は理由不備や証拠判断の違法を主張して上告した。
事件番号: 昭和38(オ)1039 / 裁判年月日: 昭和40年1月19日 / 結論: 棄却
裁判所が証拠を排斥するにつき、その排斥の理由をいちいち説示する必要のないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和三〇年(オ)第八五一号同三二年六月一一日第三小法廷判決・民集第一一巻第六号一〇三〇頁)。
あてはめ
原判決は、提出された各証言等につき、認定した事実を覆すに足りない旨を判文上明らかにしており、何ら判断を加えていないという批判は当たらない。証言を排斥するに際し、具体的事由を説示せずに単に措信し難いとすることは、判例の趣旨に照らして適法である。さらに、108坪の土地が828坪の範囲に含まれるとの認定も判文上明確であり、理由不備の事実は認められない。これらは原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実認定の範囲内であるといえる。
結論
証拠を排斥する具体的理由の説示は不要であり、原判決に証拠法則違反や理由不備の違法は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟法における自由心証主義(247条)と判決の理由付記(253条1項6号)の限界を示す。実務上、証拠の排斥理由が簡略であっても、証拠価値を比較検討した結果であることが判文から読み取れるならば、直ちに理由不備とはならない。事実認定に関する上告理由を構成する際の高いハードルを示す典型例である。
事件番号: 昭和39(オ)848 / 裁判年月日: 昭和40年10月5日 / 結論: 棄却
供託書の記載を司法書士に依頼するに際し、法律知識のとぼしい普通の人間は、法律専門職である司法書士に対し供託原因の記載内容まで指示することは通常期待できない、という経験則はない。
事件番号: 昭和31(オ)289 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を非難するものにすぎない場合、民事訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人らが原審の事実認定を不服として上告を提起したが、上告理由の内容は、原審の証拠評価や事実認定のプロセスに対する非難を主とするものであった。 第2 問題の所在(論点):事実…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。