判旨
裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。
問題の所在(論点)
証拠申請に対し、裁判所が明示的な却下決定を口頭弁論調書に残さず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させることが、民事訴訟法上の証拠採否の手続として許されるか。
規範
裁判所が証拠申請を却下するに際し、口頭弁論調書上、明示的に不採用の決定をした旨の記載がない場合であっても、訴訟指揮の全過程に照らして、当該証拠を「取調の要なきもの」として暗黙に排斥したと合理的に推認できるのであれば、手続上の違法はない。
重要事実
上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を採用しない旨の決定に関する明文の記載がなされていなかった。その後、原審は当該申請に基づく証拠調べを実施することなく弁論を終結させ、判決を言い渡した。上告人は、この点に手続上の違法があるとして上告した。
あてはめ
本件では、調書上に不採用の決定に関する直接の記載はないものの、本件訴訟の指揮及びその経過を総合的に考慮すれば、原審は当該証拠を不要と判断して暗黙に排斥したものと認められる。裁判所には証拠の採否に関する裁量権があり、証拠調べを行わず弁論を終結させた事実は、実質的に却下の判断が示されたものと評価できる。
結論
原審の手続に違法はなく、暗黙の証拠排斥は適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
証拠採否の機微に関する判例であり、調書への不採用決定の記載漏れを主張する際の反論として機能する。もっとも、実務上は争点に直結する重要証拠について理由なく黙殺することは許されないため、本判例の射程は「訴訟の経過から排斥が合理的に窺える場合」に限定されるべきである。
事件番号: 昭和30(オ)136 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和30(オ)39 / 裁判年月日: 昭和31年2月21日 / 結論: 棄却
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