判旨
第一審で提出された準備書面の内容が判決の事実摘示から漏れていたとしても、控訴審で異議を述べず、第一審判決の事実摘示通りに陳述した場合には、当該事項は控訴審の判断対象とならない。
問題の所在(論点)
第一審判決の事実摘示に記載漏れがある事項について、控訴審で異議を述べずに第一審判決の摘示通りに陳述した場合、当該事項に関する「判断遺脱」を理由として上告することができるか。
規範
上告審において主張できる判断遺脱の違法(民事訴訟法旧394条、現312条等参照)は、原則として原審(控訴審)において適法に主張され、かつ裁判の基礎とされた事項に限られる。第一審判決の事実摘示に不備がある場合であっても、当事者が控訴審においてこれに異議を申し立てず、第一審判決の摘示通りに陳述したときは、当該不備を前提とした手続が確定し、後の上告審でこれを理由に判断遺脱を主張することはできない。
重要事実
上告人は、第一審においてある準備書面を提出し陳述したが、第一審判決の「事実」欄にはその記載が漏れていた。しかし、第二審(控訴審)の口頭弁論において、上告人はこの事実摘示の漏れについて何ら異議を申し立てなかった。そればかりか、第一審判決の事実摘示の内容をそのまま引用して陳述し、改めて当該準備書面の内容を主張することもなかった。その後、上告審に至って、原判決(控訴審判決)には第一審で主張した事項についての判断遺脱があるとして、大審院判例違反を理由に上告した。
あてはめ
記録によれば、第一審で所論の準備書面が提出・陳述された事実は認められる。しかし、第一審判決にその記載がないことに対し、上告人は第二審で何ら異議不服を申し立てていない。むしろ、第一審判決の事実摘示の通りに陳述しており、控訴審の審理において改めて右の主張をした形跡も認められない。そうであれば、当該事項は控訴審における攻撃防御の対象から外れており、控訴審がこれについて判断を下さなかったとしても、それは原審で主張されなかった事項について判断を経なかったに過ぎないといえる。
結論
本件上告は棄却される。控訴審で主張されず判断を経ていない事項について、上告審で判断遺脱の違法をいうことはできない。
事件番号: 昭和31(オ)289 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を非難するものにすぎない場合、民事訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人らが原審の事実認定を不服として上告を提起したが、上告理由の内容は、原審の証拠評価や事実認定のプロセスに対する非難を主とするものであった。 第2 問題の所在(論点):事実…
実務上の射程
民事訴訟における「適時提出主義」や「控訴審の構造(事後審的性格を伴う続審制)」を背景とした判断である。答案上は、一審の主張を控訴審で維持しなかった場合の効果として引用し得る。特に、一審判決の事実認定や事実摘示に不服がある場合は、控訴審の冒頭(口頭弁論)において適切に更新・訂正の申し立てをしなければ、上告審での救済は絶望的になるという実務上の教訓を示すものである。
事件番号: 昭和52(オ)298 / 裁判年月日: 昭和53年7月17日 / 結論: 棄却
判決の事実摘示として証拠関係の記載を欠いたとしても、判決に影響を及ぼすべき違法があるとは認められない。
事件番号: 昭和38(オ)585 / 裁判年月日: 昭和39年2月21日 / 結論: 棄却
ただ単に一審判決の主文に対し不服である旨の控訴状の記載のみでは、請求原因たる事実についての認否を明らかにしているとはいえず、擬制自白が成立しうる。
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
事件番号: 昭和27(オ)609 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件において、上告理由が特例法に定める上告理由のいずれにも該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地が特別都市計画区域外の土地であると主張し、自身の賃借申出が有効であるとして争った。しかし、原審(および前審の…