ただ単に一審判決の主文に対し不服である旨の控訴状の記載のみでは、請求原因たる事実についての認否を明らかにしているとはいえず、擬制自白が成立しうる。
一審判決に不服である旨の記載のある控訴状の記載と請求原因の事実についての認否の有無。
民訴法140条,民訴法367条
判旨
控訴状に請求の趣旨の否認以外の具体的な事実に対する認否の記載がない場合、第一審での自白や擬制自白の効果は維持され、裁判所は釈明権を行使することなく当該事実を判決の基礎とすることができる。
問題の所在(論点)
第一審で自白や擬制自白が成立している場合に、具体的な事実上の主張を含まない控訴状を陳述(擬制)しただけで、第一審での自白等の効力を争うことができるか。また、裁判所は事実関係について釈明権を行使すべきか。
規範
控訴状の記載が、単に第一審判決に対する不服を表明し請求の趣旨を否認するにとどまり、請求原因事実に対する具体的な認否を明らかにしていない場合には、第一審における自白(権利承継前の前主の自白を含む)や擬制自白の効力は失われず、控訴審においてもそのまま維持される。また、このような場合には、裁判所は民事訴訟法上の釈明権を行使して改めて認否を求める義務を負わない。
重要事実
上告人は第一審において本案の弁論を行わず、準備書面も提出しなかったため、承継前の被告らの自白および擬制自白(旧民訴法140条)に基づき敗訴判決を受けた。上告人は控訴したが、控訴状には「原判決は全部不服であるから取り消しを求める」旨の記載があるのみで、具体的な事実に対する認否の記載はなかった。控訴審の第1回口頭弁論期日に上告人が不出頭であったため、裁判所は控訴状の陳述を擬制(旧民訴法193条)した上で弁論を終結し、第一審判決を引用して控訴を棄却した。
事件番号: 昭和30(オ)39 / 裁判年月日: 昭和31年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で提出された準備書面の内容が判決の事実摘示から漏れていたとしても、控訴審で異議を述べず、第一審判決の事実摘示通りに陳述した場合には、当該事項は控訴審の判断対象とならない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審においてある準備書面を提出し陳述したが、第一審判決の「事実」欄にはその記載が漏れていた…
あてはめ
本件控訴状には原判決に対する不服の概括的な記載があるのみであり、請求の趣旨の否認とは解せても、請求原因事実に対する具体的な認否が含まれていない。したがって、第一審で生じた自白の効力や擬制自白の成立を覆すに足りる主張がなされたとは認められない。このような状況下では、改めて判断すべき事項はなく、裁判所が釈明権(旧民訴法128条)を行使して上告人の真意を正す必要もないといえる。
結論
控訴審において、具体的な事実上の主張を欠く控訴状の陳述のみでは第一審の自白等の効力は維持され、裁判所が第一審判決を引用して請求を認容した判断に違法はない。
実務上の射程
控訴審における「続審制」の限界を示す。控訴状の陳述によって第一審の主張が継続するとしても、具体的な認否を欠く場合は「争った」ものとは評価されない。実務上、控訴審で第一審の事実認定を覆すには、控訴状または準備書面において具体的な理由を付した否認や抗弁を提出し、擬制自白の状態を脱する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和52(オ)298 / 裁判年月日: 昭和53年7月17日 / 結論: 棄却
判決の事実摘示として証拠関係の記載を欠いたとしても、判決に影響を及ぼすべき違法があるとは認められない。
事件番号: 昭和37(オ)106 / 裁判年月日: 昭和38年6月7日 / 結論: 棄却
一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。 二 (省略)
事件番号: 昭和33(オ)529 / 裁判年月日: 昭和36年12月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白がなされた後であっても、相手方が自白の撤回に対して異議を述べなかった場合には、その自白の撤回は有効となる。したがって、裁判所は当該事実を争いのある事実として取り扱わなければならない。 第1 事案の概要:土地所有者であると主張する被上告人が、賃借人とされる上告人に対し賃料を請求した事案。…
事件番号: 昭和27(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が実質的に法令違反や事実認定の不当を主張するものに過ぎず、民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告事由に該当しないとして棄却された事例である。 第1 事案の概要:上告人は、原判決における憲法違反等を主張して上告を提起した。また、原審の口頭弁論に関与した裁判官の署名捺印の有無に…